政治的に正しい奈良のマスコットキャラ――平城遷都1300年祭オワタ編

発表されるや否や、2ちゃんねるでも、はてなブックマークでも、そしてとうとうマスコミ紙上でも非難の嵐を吹き荒れさせるという、宣伝キャラクターとしての役割を見事に果たしている例のキモいマスコットキャラ。

痛いニュース(ノ∀`):【ゆるキャラ】“滋賀のひこにゃんに強力なライバルが!”平城遷都1300年祭のマスコットキャラクター…奈良
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1096344.html


えーと何のマスコットなんでしたっけ?
とにかく、奈良はダサいということだけはよくわかる、非常に*1よくわかる。
そのイメージの良し悪しはさておき「奈良ってどんだけ!」というイメージはこれで120%日本全国に行き渡ったのですから、まさに申し分のない働きようです。


ですが、その疑問点に触れないわけにもいきません。
それを集約したものがこのような意見でしょう。

平城遷都1300年祭:マスコットキャラに市民から批判 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/today/news/20080302k0000m040103000c.html


▽フリープロデューサーの木村政雄さんの話 キャラクターはイベントへの第一印象を決めるもの。まず人目を引き、うけるものを作ることが大切。「ひこにゃん」や「はばタン」を見ても、今はやるものはシンプルなものだが、こんな写実的なデザインがなぜ選ばれたのか理解に苦しむ。県民の力で記念祭を盛り上げていくなら、県民の意見を広く聞くべきだった

鹿笛:先日発表された平城遷都1300年祭のマスコットキャラクター… /奈良 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/area/nara/shikabue/news/20080224ddlk29070400000c.html


21あった候補の中から選んだそうだ。このキャラクターに負けた他の候補をぜひとも見てみたいのだが。


上の意見は特に、さすがは吉本の漫才ブームの仕掛け人というべきでしょうか。
裏も表も見通した意見です。
そのポイントは、「県民の意見を広く聞くべきだった」というフレーズ。
そのこころは……




これはデキレースだということです。




仮称、「鹿角童子」または「平城セント」*2が発表される少し前、奈良ではこんなイベントが開かれていました。

神戸阪神地域芸術文化情報 : 久しぶりの奈良(13)籔内佐斗司 in 興福寺 興福童子の秋祭り
http://tetsuwanco.exblog.jp/7663616/
奈良倶楽部通信: 興福童子の秋祭り 籔内佐斗司の世界in興福寺
http://naraclub.blogspot.com/2007/10/in.html
奈良っこスタッフブログ:興福寺特別公開 2007
http://www.narakko.com/blog/2007/11/_2007.html


そう、このマスコットキャラをデザインした籔内佐斗司その人の特別展です。
いや、特別な上にも特別を重ねた展覧会だというべきでしょうか。
この展開会は、興福寺大圓堂の本尊・秘仏聖観音立像が初公開されるのと同じ時、同じ場所で開かれていたのですから。
これは極めて政治的な関係を抜きにしては到底ありえない、考えられないことです。
そして、この関係がどこまで深いものか、それは氏の経歴からもハッキリとわかります。

〜研究室メンバー紹介〜■ 教授・籔内佐斗司
http://www.geidai.ac.jp/labs/hozonchokoku/aboutus/member/member.2006.html

1953
大阪市生まれ
1978
東京芸術大学美術学部彫刻科卒業
1980
同学大学院美術研究科修了(彫刻専攻、澄川喜一研究室)
1982 
同学大学院美術研究科保存修復技術研究室非常勤講師(〜1987)
この間、仏像や古美術の古典技法と修復技術を研究し、東京芸術大学が行った奈良市薬師寺地蔵菩薩立像、新座市平林寺十六羅漢像等の保存修復事業に参加。
1987
彫刻家として活動を始め、現在に至る。
2004
現職に就任<研究活動>
個展
1984「ふぃじかりずむ」(かわさきIBM市民文化ギャラリ−/神奈川)
1987「Skulpturen」(ドイツ文化会館OAGハウス東京/東京)
1988 個展(Alexander F.Milliken INC./NewYork)
1993「籔内佐斗司博物学的世界」(日本橋高島屋刈谷市美術館等巡回)
1996「The World of Satoshi Yabuuchi- sculptor」(Castellani Art Museum ofNiagara University/N.Y. U.S.A)
1999「籔内佐斗司の世界・色心不二」展(三越エトワール/Paris)
   パリ帰国記念展「籔内佐斗司の世界・色心不二」展(主催・朝日新聞社三越日本橋本店ほか)
2002「大仏開眼1250年奉賛 籔内佐斗司 in 東大寺〜太陽と華と〜」展(東大寺金鐘会館/奈良)
2003「平櫛田中賞・倉吉:緑の彫刻賞受賞記念 籔内佐斗司」展(日本橋三越)(松山、福岡、仙台)
2004「第一回奉納演奏会『羯磨会in青松寺』/堀江真理子・籔内佐斗司のコラボレーション」(青松寺観音聖堂/東京)
2005「第二回奉納演奏会『羯磨会in護国寺』/堀江真理子・籔内佐斗司のコラボレーション」(大本山護国寺/東京)
   特別展「籔内佐斗司の世界展in醍醐寺」展(醍醐寺霊宝館ギャラリーおよび桜の庭園/京都)
   「第三回奉納演奏会『羯磨会in清水寺』/堀江真理子・籔内佐斗司のコラボレーション」(音羽山清水寺大講堂「洗心洞」/京都)
   「籔内佐斗司の小宇宙展」(日本橋三越本館 アートスクエアー)
2006「籔内佐斗司彫刻展 神霊的童子」(香港そごう)
   
受賞歴
1985 第五回天展彫刻部門大賞
1988 第11回神戸須磨離宮公園現代彫刻展招待出品
兵庫県立近代美術館賞・神戸市緑化芸術賞
1996 Mayor?s Award for Community Service (City of Niagara Falls)
1997 第17回現代日本彫刻展招待出品
宇部興産株式会社賞
2003 第6回倉吉:緑の彫刻賞
第21回平櫛田中賞

著作
「新薬師寺地蔵菩薩像修理研究報告書」(共著、芸大美術学部紀要21号、1986)
籔内佐斗司作品集・大博物誌」(求龍堂、1991)
籔内佐斗司博物学的世界」(展覧会実行委員会、1993)
「The World of Satoshi Yabuuchi・sculptor」(展覧会実行委員会、1996)
籔内佐斗司の世界・色心不二」展図録(朝日新聞社、1999)
「阿修羅を究める」(共著、興福寺監修、小学館、2000)
「開運『楽観道』のすすめ」(求龍堂、2002)
大仏開眼1250年奉賛 籔内佐斗司 in 東大寺〜太陽と華と〜」展覧会報告書(実行委員会、2002)
「開運招福 籔内佐斗司の般若心経」(小学館文庫「てのひら般若心経シリーズ」2003)

パブリックコレクション
参議院兵庫県立美術館徳島県立美術館、島根県立美術館新潟県万代島 美術館、秋田県立近代美術館セントルイス美術館、ナイアガラ大学付属カス テラーニ美術館、ウッドワン美術館、うるし蔵美術館、萬年山青松寺、東大寺 福祉事業団ほか

講演会
富山県立ガラス工芸研究所、金沢美術工芸大学、ナイアガラ大学付属カステラ −ニ美術館、パリ日本大使館文化広報センター、静岡県立美術館、奈良興福寺 文化講座「天平彫刻の心と形」奈良興福寺文化講座「定朝と運慶」、井波彫 刻組合、東大寺友の会、飛騨一位一刀彫り組合、新工芸家連盟近畿会、NPO世 界子供基金講演会ほか


籔内佐斗司と奈良とは、20年来の持ちつ持たれつの関係なのです。
ここまでの深い関係を持った人間が参加した「選考」が、公平なものだと誰が考えられるでしょうか?


そこでこそ、先の「県民の意見を広く聞くべきだった」というフレーズが実に含みのあることばだったことがわかるでしょう。
これはかつての京都駅ビルの選考で、「東大卒だから」という「権威」が理由で原広司の「壁ビル」デザインが「選ばれた」のとまったく同じ構図だといえるでしょう。*3


「奈良にうまいものなし」とはよく言ったもので――うまいの意味が違いますが――それを地でいく失敗を繰り返すあたり、実に奈良。

【社会】「奈良にうまいものなし」返上狙い、名物料理募集→それでも最優秀賞なし
http://news5.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1070014411/


京都と並ぶ古都観光のメッカ・奈良が、新しい名物料理を生み出そうと頭を悩ませている。「奈良にうまいものなし」という“汚名返上”が狙いだが、全国に呼び掛けた名物料理アイデア募集では、最優秀賞なしという期待外れの結果に


「全国に呼びかけていても最優秀賞なし」。
この前例を見るに、たとえ他の21候補キャラクターを公開投票で選んでいても、結果は同じことだったのかもしれません。
南都仏教の政治力は、そんな投票などものともしなかったでしょう。
彼らが20年来のお付き合いのあるエラい先生に恥などかかせるわけがありません。


坊主が政治にからむと「ロク」なことがないってのは、まさに1300年変わらない事実ってわけですね!

*1:ディ・モールト

*2:←これセント平城の方が語呂いいよな

*3:モノがモノだけにその弊害の大きさはこんなしょーもない一過性のイベントとは比べられませんが