秋葉原無差別殺傷事件への東浩紀コメントについて
asahi.com（朝日新聞社）：絶望映す身勝手な「テロ」 秋葉原事件で東浩紀氏寄稿 - 社会
http://www.asahi.com/national/update/0612/TKY200806120251.html
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ネットで読んだ場合にはわからないが、この記事は紙面のどこに配置されていたか。
それがまず問題だと感じた。
この記事を探すのには手間取った。一面の目次一覧にはもちろん載っていなかった。
実際見つかったのは、3面でもなく、社会面でもなく、ほとんど紙面の奥に近いような「文化面」であった。
「社会面」ではなく、「文化面」である。
この「文化面」というコンテクストが語っているものは何か。
あくまで、この事件は社会一般とはかけ離れたアキハバラというオタク文化、日本の中にかろうじて引っかかった一特殊文化が生んだ一特殊事例だというのが、それが暗に語っているメッセージなのではないか。
正直、内容以前に、この紙面構成に「悪意」を感じた。
まるで「ツナギが隠された」かのような「悪意」を。
東は、凶行の対象が首相官邸や経団連ではないからテロではないが、「あえてテロととらえたい」という。
だがそれでは、いやそれこそ、せいぜい「共感」に止まってしまうものなのではないか。
明確にテロだととらえなければ、この事件は「解決」へ向かう糸口すら持てないのではないか。
「政治的対象を攻撃しなければテロではない」という「甘い」認識が、このスクールキラーの系譜の呼び水となっているのではないのか。
これこそがテロでなくてなんだというのだ。
「無辜の通行人を殺してもなにも変わるわけがない」という指摘も間違っている。
「無辜の通行人」だからこそ殺されたのだ。その意味をこそとらえなければならない。
「無実の人間」だからこそ殺されたのだ。スクールキラーに立ち返れば、「なんの罪もない子供」だからこそ殺されたのだ。
教育によって「日本人になる」「人間になる」偏在する日本の象徴としての学校システム、その「一部」だからこそ殺されたのだ。
日本という国家を左右する権力をもつ者である匿名の有権者、すなわち、国家テロの一員としての一般人、無関係を装いながら無自覚に他人の「死」を消費する「普通の人々」だからこそ殺されたのだ。
そして今回、「無辜の通行人」が殺されたことによって、犯人の置かれた状況そのものによって、このスクールキラーの系譜が、日本社会に根を張った絶望から発したことが、その一端がようやく衆目を集めるようになったのである。
なにが変わっていないというのか。
わずか数分程度の犯行に、日本はその後96時間揺さぶられ続けているのである。
なにが変わっていないというのか。
「幼稚なテロリスト」という留保など必要ない、犯人は紛れもない「テロリスト」だ。
犯人は「幼稚」なのではなく、「言葉すら持てないテロリスト」「語ることができないテロリスト」なのだ。
「幼稚」という言葉で貶め、「人間」であることの条件を失った者に最後に残された「政治性」すら奪おうというのか。
「社会性のかけらもない」「身勝手な劣等感」とは、「自然」に個人の内面に宿るものだとでもいうのか。
「人間」でない者は、<非-人間>は、「テロリスト」にすらなれないというのか。
それとも、「生きさせろ！」という「生権力」への滑稽な媚態を示せばいいとでもいうのか。
事件全体を比喩的に俯瞰してみれば、犯人が自らの腹に突き立てた刃が、たまたま他人の体に達したに過ぎないともいえる。
テロとは精神的暴力であり、物理的暴力の大小は単なる手段に過ぎない。冷徹に見れば、死傷者の数はまったく問題ではないのだ。
自分の命そのものをメディアとして言葉にならない声を発したこの行為をテロと位置づけずに捨て置いたなら、それこそ第二、第三の「アキハバラ」が日本を襲うことは確実だろう。
それも、「アキハバラ」だとはわからない形で。
そして、もちろん犯人は英雄ではない。被害者だ。
日本という国に背中を押されて望みもせぬ凶行に押し出され、命を「絶った」被害者だ。
幼稚？未熟？心の闇？自己愛？異常者？落ちこぼれ？ゲーム？オタク？キチガイに刃物？
その無思考な言葉の数々が「次の人間」の背中を凶行へと押し出していることに気づかないから、この日本は「美しい国」なのだ。
テロリストは語ることができない - こころ世代のテンノーゲーム
http://d.hatena.ne.jp/umeten/20080608/p2
テロか、犯罪か ＜TOKYO WAR 2008・アキハバラ＞ - こころ世代のテンノーゲーム
http://d.hatena.ne.jp/umeten/20080611/p1
