人喰い桜が春に咲く

人生の新しい門出を祝う桜。
だがその最大限の祝福が、なされたとたんそのとたん、
めでたい花弁は風に散り、瞬く間にも剥ぎ取られ、あっという間に消えうせる。
そして新芽が出たその頃に、毒虫の卵を抱きかかえ、
緑の夏にはその葉の下に、雨よあられと毒を降らす。
忘却の秋には枯死した葉をば、塵や芥と撒き散らす。
そうして、そのまま冬にもなれば、枯れ木も同然の黒い影。
これがめでたい日本の花か。
これぞめでたい日本の花か。
人を喰った桜の話。