なぜサルコをフランス人は選んだのか?

フランス人といえば恋愛。恋愛といえばフランス人。
恋愛を水と空気と同じようにとらえているというのがフランス人だと思っていたのだが、どうもそうではないような雰囲気を伝えるニュースがあった。
これである。

仏大統領の支持率4割切る、再婚報道に国民が反発か(読売新聞) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080212-00000050-yom-int

こんな「再婚報道」ごときにこれほど「反応」するのがフランスだったのだろうか?
頭にあったのは、フランスの政治家と女性問題を代表するセリフ、「それが何か?」である。

【読みもの】及川健二のパリ修行日記 ≫ フランスでは報じられない政治家の不倫 プライベートをめぐる報道の違い●スタジオ・ポット/ポット出版
http://www.pot.co.jp/oikenparis/archives/2007/09/10/private


フランソワ=ミッテラン元大統領には100人近くの愛人がいたとも噂されるぐらいで、彼の女好きはメディアでは周知の事実だった。(略)
ダニエル=ミッテラン夫人という素晴らしい正妻を持ちながらも、多くの女性との逢瀬を楽しんだミッテラン氏だが、長年、付き合った愛人がいる。アンヌ=パンジョさんだ。
オルセー美術館の館員であったアンヌさんはミッテランと1961年に知り合い、恋に落ちる。1974年12月18日には彼を生き写ししたような顔立ちの整った娘・マザリーヌさんが誕生する。
1981年の大統領就任直後の記者団との朝食会の席上で、婚外子の娘について質問されたとき、「それがどうかしましたか?」(エアロール?)とミッテラン氏は切り返した

それに比べれば、同じ大統領の女性スキャンダルとはいえ、サルコジのやったことというのは正式に離婚したあとの再婚だ。
同義的に問題があるとすれば、はるかにミッテランの方が上だろう。
でも、ミッテランは賞賛され、サルコジは叩かれる。


わからん。


また一方、先に引用した記事の続きにはこうもある。

【読みもの】及川健二のパリ修行日記 ≫ フランスでは報じられない政治家の不倫 プライベートをめぐる報道の違い●スタジオ・ポット/ポット出版
ttp://www.pot.co.jp/oikenparis/archives/2007/09/10/private


最近でも、フランスでは政治家のプライベートに関する問題があった。ニコラ=サルコジ大統領の妻・セシリア夫人が2005年5月末に、突然、ニューヨークへ愛人と駆け落ちしたのだった(後に寄りを戻す)。フランスのメディアはこれを黙殺した。しかし、スイスの日刊紙「ルマタン」がこの事実をスクープし、仏メディアも追従した。
家族の問題が公にされたサルコジ氏のケースは例外的だ。サルコジ氏は効果的なメディア戦略として、「オシドリ夫婦」を演じ、妻とじゃれ合う姿をメディアに堂々と披露し、赴任先の省庁で仕事場を妻に与え、働かせたことなどから、夫婦関係はパブリックな問題だと仏メディアは認識した。だから、サルコジ氏のケースに限っては仏メディアも報道したのだ。


なるほど。私生活には干渉しないが、公的関係にはメスを入れる、ということか。
「恋愛に寛容なのがフランス」だと思っていたが、正しくは、「恋愛だろうが、愛人だろうが、不倫だろうが、離婚再婚だろうが、それがごく個人的な生活圏内にとどまる問題であればいちいち取り上げないのがフランス」と、なるわけだ。
政治戦略、メディア戦略として男女のパートナーシップを利用したという点で、サルコジ問題はこれまでの政治家のそれと一線を画している。
そういう理解でよろしいでしょうか?


と思ったら、ちょっと前のアンケートでは、ミッテランに対するのとかわらないこんな反応だったらしい。

サルコジ夫婦の離婚
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20071021#p2
アンケートによれば回答者の89%は『ニコラとセシリアの離婚は両者にしか関係のない私的な出来事』であり、11%は逆に『離婚は公的な事件だ。なぜなら大統領の私生活は一般国民にも関係があるから』と答えているそうだ。


うーん……。
「ちょっと何言ってるかわかんない」




そこで、はてな界のフランス・フランス語圏の識者といえば、すぐ頭に浮かんだのがid:temjinusさん。
フランスのことはフランスにいる人に聞け、とばかりに質問してみたところ、さっそく丁寧なお返事をいただく。

2008-02-16 - フランス語の砂漠:エグゾティスムは他人の日常
御題頂戴
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20080216#p1


まずは、そのお返事の要点を見てみる。


サルコジが大統領選に勝った理由>

前回大統領選挙はサルコジとセゴレンヌの一騎打ちだった。で、サルコとセゴ、どちらを選ぶかとなると、これはサルコの方が安心できた。どうもセゴは大統領選挙運動でドジばっかりやっていたという思い出が残っている。それに、これも当時書いたことはずだけれど、セゴは理想主義的なところがあり、大統領になると現実を無視して突っ走るんじゃないか、と怖いところがあった。一方サルコは日和見だから、状況次第でころころ変わるはずだから、それほど恐くない、というような。
で、結局サルコは悪い中のいい方、だったわけです。


なるほど、悪か最悪かを選べという消去法だったわけか。
民主党自民党に勝てないと言われる理由とどこか似ている。
まあ、サルコジにせよ自民党にせよ、それが限界に来ているからこそ今の不支持率があるわけだが。


しかし、外にいる人間から見れば、当時の報道を思い起こすかぎり、セゴレンヌ・ロワイヤルというのは、今のアメリカ大統領選で「女性」を掲げるヒラリーと「変革」を掲げるオバマを足して二で割ったようなポジションの人物かと思っていたのだが、どうやらフランス人から見れば、福島瑞穂的ポジションの人物だったようである。
これも、マスコミが「あって欲しい」と願うように報道がされていたということか。


temjinusさんの過去の記事を見ても、セゴレンヌについては手厳しい評価ばかりが目に付く。

<選挙前>
■面白くなってきたフランス大統領選挙
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20070314#p2
セゴレンヌは最初トニー・ブレア風の政策をやるようなことを言っていたけれど、社会党の党員からの批判で路線変更。さらには嫌いなストロスカーンやファビウスとも手を打たなければいけない羽目になって政策方針はますます混乱。場当たりな発言ばかりの大統領候補らしからぬふるまいで、おそらくこれはダメだろう、という予想が大方だ。

<選挙前>
エマニュエル・トッド II
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20070315#p1

セゴレンヌ・ロワイヤルのことですか、、、
セゴレンヌ・ロワイヤル。私にはセゴレンヌは空虚から作り上げられ、彼女は今のセゴレンヌに対して本当には責任がないように思える。
大週刊誌と世論調査が、それだけが、セゴレンヌの存在を信じさせようとしている。。。彼は政治的プログラムなしにセゴレンヌを指名した。
これはある種の政変だ。もしセゴレンヌが指名されることになれば、社会党がのっとられたようなものだ。いずれにせよ社会党には加速する腐敗の印象がある。
ウエッブサイトへの簡単な登録で候補指名選挙に参加する権利が生まれるというアイディアは、通念としての政党の一種の破壊だ。

<選挙後>
■セゴレンヌはうまく社会党を乗っ取れるか?
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20070516#p2
大統領選結果が出たその夜に『まだ先があるからねぇ』と啖呵を切ったセゴレンヌは5年先の社会党の大統領候補を今決めようじゃないかと言って他の社会党大物の顰蹙を買った。しかしクデタを起こして社会党を乗っ取る気持ちは変わらないようだ。

<選挙後>
■セゴとオロンド
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20070612#p2
社会党の大統領候補だったセゴレンヌがバイルウと手を握ると言ったとたんに、ダンナで社会党書記長のオロドが「そんなつもりはない」と別の場所で言下に否定。
またですか、という失態。

<選挙後>
■セゴレンヌの行方・・・ サルコの成功
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20070624#p2
社会党の執行委員会がパリにこの土曜に開催され、書記長オロンドの提案した議案が採択された。これはセゴレンヌ派の提案をしりぞけるもの。ということは社会党は政党としてセゴレンヌを否定したわけだ。セゴレンヌはこの委員会には出席していない。
また大統領選挙中に「基本給与を1500ユーロにする」と言ったのはファビウスの圧力で、私自身は信じていなかったのよ、と発言したセゴレンヌは社会党青年部からも批判されている。
まあ、大統領選挙時代からアタシャ、勝手ニヤルワヨ、といのがセゴレンヌに態度ではあったけれど、こうなるといっそう孤立化が進むんじゃないか。
そのうち主婦の退屈な生活に満足できなかったチャタレー夫人がマスコミにもてはやされて大統領選挙に打って出て、ちょっと頭がオカシクなったんだ、なんて批判も出始めるぞ、この調子だと。


対して、就任当初のサルコジの「手堅さ」に対しては、temjinusさんも含めフランス社会は評価をしていたようだ。

■予想通りにサルコか/はい、サルコでした
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20070507#p1
フランスでは移民の子も大統領になれる、エリート学校を出なくても、ということはいいことかもしれない。
・・・
サルコジの演説はよくできていた。自身をフランス人の大統領として規定し、保守のそれとして規定することはなかった。またセゴレンヌへの尊敬を表明。なかなかの布石である。やはり国を左右に分断することを恐れたためか。

■セゴとオロンド
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20070612#p2
しかしサルコがこれだけ巧者だとは考えなかった。
司法大臣に移民二世代目を付けて、移民取締り批判に対する防御戦を張るし、社会党党員だったクシュネールを外相にして内閣はオープンだなどと言うし、ルペンのショーヴァン(国粋)有権者は丸々取り込んでしまうし、しかも自党の有力者の不満を封じてまでこうしたことをやるんだから実力者と言えば、実力者だ。
なんか日本の小泉前首相みたいになってきたな、全戦全勝、左翼がなんと言おうと。
米国への態度もそっくり。

■セゴレンヌの行方・・・ サルコの成功
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20070624#p2
EU憲法を簡素化した『ミニ条約』を調印にこぎつけたサルコジの外交手腕をルモンドがほめている。
確かに、これは功績だ。
セゴレンヌのチャンスはますます遠のく。


それが、今の不人気、不支持率である。
temjinusさんがいうその理由がこれだ。


サルコジの人気が落ちた理由>

なんで人気が落ちたかというと、これは細部ばかりにかかわる政策を発表して、肝心の行政改革や労組解体などをてんでやっていないからだと考えています。労組に対する態度も政府の投資でみんなを助ける、と言ってみたり、政府は資本家に取って代わることはできない、と言って倒産企業の従業員に冷たい顔をしたり、てんで一貫性がない(要は日和見の本領発揮)。そこに来て最近の女の話。フランス人は大部分は固い人たちです。特に公務員が多い国で、公務員は現代のブルジョワだということになっている。ブルジョワは保守的。成金風はもちろん嫌い。だから成金趣味、成りあがりモンのサルコに嫌気がさした。最初は期待されていたけれど、これじゃ、なんだ発情したエテコウじゃないかと、馬鹿にサレチャッタ。
と考えています。


内政や経済政策の失策が続き、それに加えて、単なる私生活でもない、公的な関係ともいえない、みせびらかし的女性関係が不支持を決定付けたというところだろうか。
本来の支持基盤である保守層から離反をまねているというなら、大統領は制度的に解任されることがないしても、早々にレームダック化する可能性もあるわけだ。

<参考:フランスの大統領制について>
http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20020507/index.htm


temjinusさんの過去の記事を見るに、サルコジをめぐる「不穏な空気」は、早くも昨年の秋頃から表面化し、今年に入ってからさらに悪化しているようである。

■四権分立とサルコ
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20070917#p1
フランス大統領のサルコが『ヨーロッパ中央銀行金利政策は間違っている』と言い、他国の財務大臣のヒンシュクを買った。金利が高いのはダメだ、フランスは大変なんだから、金利を下げて、うちの製品を輸出しやすくしてくれ、と主張したのだ。
いつのころからか、モンテーニュ三権分立に、通貨供給権が加わって四権分立になっていることにサルコは気づいていないようだ。
(略)
サルコ、日和見だからな・・・
サルコが失敗するのは来年の初めくらいじゃなかろうか、と理由もなく推察。

ニューヨークタイムズがサルコを批判すること
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20071023#p1
リベがNew York Timesの記事を引用している:

辛辣なエディトリアルでNYTはナチやヴィシー政権が援用した『擬似科学概念』を思わせる『下劣』な法案を告発している。LIBERATION.FR : lundi 22 octobre 2007

この下劣な法案というのは、フランスに住む移民が家族を呼び寄せるならば、本当に家族であるかどうかをDNAテストで確認しようというもの。

■明日のパリは交通機関無し
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20071113#p4
リベによればフランス人は今回のストには批判的でサルコジ応援、
しかしサルコジの経済政策には大いに不満、という結果が出ている。
特に購買力の低下を批判する人が多い。

■公務員接待はフランスでは可
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20071226#p1
サルコが恋人とエジプトへ休暇へでかけた。
出かけるのはいいが使った飛行機が友人で実業家のヴァンサン・ボロレが提供したもの。
日本じゃ防衛省のだれそれが接待ゴルフをやって大騒ぎになったのは最近のことだ。
ところがフランスじゃ接待は大統領が率先してやる国なのだ。
フランス人の80パーセント以上はサルコが誰と寝ようと知ったことか、私生活は勝手にやってくれ、と回答しているアンケート結果が出ている。
しかし公務員接待を取り締まる法律はないのかね、この国は?
こういういい加減なところはラテン風だよな、フランス。

■Bling-bling大統領
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20080113#p2
AFPの記事タイトル

ブリング-ブリング:ヒップホップからエリゼ宮

最近サルコの形容詞として少々軽蔑的な意味で使われるブリング-ブリングについて薀蓄を傾けた記事。

「ブリング-ブリング」:ここ数ヶ月来フランスのメディアが愛用するこの言葉はヒップホップ(これフランス語風にイポップと書くべきなのか?)から来てキンピカ趣味と同義である。この言葉は少々軽蔑的な意味をふくめてサルコジ大統領のライフスタイルに貼り付けられている。

ブリン-ブリンとするとフランス風になる。ブランブランとは言わないよう。
ルペンがサルコをからかってブリンブリン-フロンフロン "bling-bling flon-flon" と言ってたけれど、最近のサルコ、嘲笑の対象になることが多いよう。エジプトでのカルラのあつかい方も「テレビカメラを意識過ぎ」と批判された。

■サルコ、枝から落ちるゾッ!
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20080116#p2
フランスでインフレ傾向が強くなっている。

昨年の食料品の価格上昇率は+3.1%、家賃は+3.4%

『国民の購買力を高める!』などと偉そうなことを言ってたサルコだが、このヤロー!
少しはフツーの国民のことを考えろ!
でトーゼンながら人気も下降線。

大統領に就任して以来はじめてサルコジへの否定的意見 (48%)が肯定的意見(45%)を上回った。
1ヵ月で6ポイントの失点。2ヶ月だと10ポイント減。

そのうちバスティーユにギロチンが据えられるぞ!調子にのってると。

■家電やパソコンに課税!
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20080117#p6
サルコが公営テレビ局のコマーシャルを止めると宣言した。当然公営テレビ局の予算には穴が開く。どうやって埋めるのか?家電やパソコンに課税しようかと政府が言い出した。こいつら、ほんまに、購買力を増す、なんぞと公約しやがって、やることは逆バッカしやないか。クッソーッ!
もちろん公営テレビ局のコマーシャルがなくなれば民間テレビ局はうれしい。公営テレビ局の分、丸儲け。そりゃサルコの友達の会社やから、トーゼンやろな。官民癒着なんてもんじゃない、正々堂々の贈収賄やないか!
すでにフランスにはテレビ視聴料がある。消費税は20パーセント近く払っとる。家電やハイテク製品廃棄処分のためのエコタックスというのも負担している。さらには非合法コピー税でメモリやハードディスクにも税をはらっとる。それでまたか払うんか?
いい加減にしろ、コイツラ!

サルコーッ!
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20080118#p4

サルコジ:もっと働くことだけが購買力を改善する道

とサルコがフランスの経営者や労組代表を集めた公式会見で宣言したそうだ。
しかし増税することはないだろう、オイ、と言いたくなる宣言でした。
それにしても国民を馬鹿にした宣言じゃんか、自分の給与は早々と上げたクセして。しかも富裕層の減税もすでに実行しているし。革命だぜ、下手すると。
(略)
仕事しろ、仕事しろとアンタは言うけれど、仕事のできる環境を用意するのも政府の仕事じゃないの?こんなヤラズブッタクリの国なんて他にないとOECDが言ってるんだぜ、ドースンダヨ?
なんだか小泉政権下の日本みたいだな。もっとも日本の首相に女の話はなかったけれど・・・

■サルコ人気、また落ちる
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20080120#p2

私生活露出と購買力でサルコジの人気が落ちる

またまたサルコの人気が落ちた。原因は上の通り。大衆ってのはテメーラが思いたいほどバカじゃねーよ。

■歴史記念物保存の原資は賭博か四つ星ホテルか
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20080122#p2
サルコジは国民の購買力を改善すると公約していたのだけれど、最近は新税ばかりを創設している。魚の消費者価格を1パーセント上げて、燃料高騰に悩む漁労者の補助金にあてたり、非合法コピー税を作ってみたり(もうハードディスクやメモリは買わない、少なくともフランスじゃ買わない!)エコロジー税を作ってみたり。国民の購買力は減るばかりだ。

サルコジ、サルコ
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20080126#p2
リベがサルコ評価の特集をやっている。サルコスタイルが世界中からの嫌われ者になりはじめている、という内容。
(略)
なんだか世界中の笑いものになってるみたいだね、サルコちゃん。

■サルコの残酷な春
春は残酷だと誰かが歌ったけれど

2008年、あるいはサルコジの予見された暗黒の年

ルモンドがこんなタイトルで記事を書いていた。
3月の地方選で負けるようなことになると、フランスの改革はストップということに。
サブプライムに端を発した経済不安、フランスの貿易赤字の増大、ヨーロッパ中央銀行の利上げ意向、アタリ・リポートが実施された場合の反発など。サルコジにいい材料はゼロ。
とにかく三月の地方選で与党が負けるとサルコジの自党に対する影響力が萎縮してしまう、ということは十分にある。


……しかし、一月の記事を見るだけでも今のフランスの政治のひどさがわかるというもの。
とはいえ、対岸のフランスだけじゃなくてこちら日本も大火事なんですけどね。
「カイカク」だの「美しい」だの……を選ぶ人間が多いのはまさに洋の東西を問わず。
次の言葉もまさに、フランスのことなのか日本のことなのか、というところだ。

一方ここでどうにかしないとフランスはダメになる一方だという思いはフランス人の大部分が持っているようだし。しかしフランスの経営者がヨーロッパで一番稼ぎがいいというアンケート結果からも分かるように社会階層の分離もかなりのもの、上はいいようにやる、下は解雇されて明日どうなるやら不安ばかり、というところもある。
フランスの現代化をサルコのような男に任せざるを得なかった、というフランスの不幸、などと小賢しいことを言ってもどうしようもなかろうし、、、


◆まとめ:「なぜサルコをフランス人は選んだのか?」という疑問◆
そもそもなんで、こんな違和感を抱いたのか。
たぶん、読売の記者の認識と見出しのつけ方に相当問題があったんだろうな、と最初は思った。
ワイドショーに慣れ切った日本の政治感覚からすれば、女性スキャンダルが大きい問題にみえたのだろう、と。
ところがマスコミの偏向報道だのそういう問題ではなく、フランスにおいてもはやりサルコジの再婚は、やはり事実として問題視されているらしい。
しかし、それは「再婚」が問題なのではなく、「サルコジだから」こその問題であるようだ。
とはいえ、それはまた経済政策の相次ぐ失敗という不支持の基盤があってこそのものにも見える。
ならば、単にフランス人が恋愛に寛容だ/非寛容だというのも、はたまた日本人が韓国人に鷹揚になる/なれないというのも、単に景気の良し悪しに左右されているだけの、きわめて二次的な問題――経済の副産物としての文化的風土、ということなのかもしれない。


恋愛とは資本主義の果実なり。
根っこが枯れたそのときにゃ、花実のつきますわけもなし。


おお、どっかで聞いたようなオチに。