IT技術がフツーの人の中でこの先生きのこるには――「はてなブックマークLite」(仮)

RSSリーダーがフツーの人に普及しなかった訳 - Core
http://d.hatena.ne.jp/core/20080219/1203426866
RSSリーダーがフツーの人に普及しなかった訳 その2 - Core
http://d.hatena.ne.jp/core/20080220/1203447152

なぜRSSSBMがフツーの人の中ではやらないのか。
その表立った理由はといえば「能動性が高すぎる」ということである。
ありていに言えば、「めんどくさい」「よくわからない」ということだ。


だが、はてなブックマークを例に取れば、その裏にもっと根本的にフツーの人が使わない、使いたくないと思う理由が隠れていることがわかる。


フツーの人、というのがイメージしにくければ、スイーツ(笑)を想像すればいい。
いつも群れて集まり、いつも一緒に行動し、いつも同じ話題を口にし、いつも同じモノを消費する。
そこに貫かれている行動原理は、「とにかく目立ってはいけない」「絶対に浮いてはいけない」ということである。


翻って見て、ライフハック(笑)の殿堂、はてなブックマークはどうだろうか?
あるいは、ブログ全体を見渡してもいい。
一言で言って、目立ちたがり屋の巣窟である。
アルファブロガーだの、アルファブックマーカーだの、「とにかく人より目だってみたがる」「絶対に他人とは違うことをアピールしたがる」というのが、行動原理になっているといっていい。
中には、そこから行き過ぎてしまい、痛い炎上キャラとなってしまう人もいる。


ともかく、フツーの人とはこの正反対に存在するものなのだ。


その人たちを相手にしようというのであれば、なによりもまずその精神構造を理解しなければならない。
その理解の鍵になるのが、「同調・共感意識」と「限界領域」という観点である。
「同調・共感意識」とは、先の「目立ってはいけない」「浮いてはいけない」という、いわば内側を固める行動原理である。
そして、「限界領域」とは、そこから外は絶対に踏み出してはならないとする、いわば外枠を固めることで内の結束を高めるものである。


この二つのフツーの意識に通低しているのは、突出すること、目立つことへの恐怖感である。
この恐怖感から見れば、「新しさ」とはつまり外の世界であり、同調・共感世界からすればそれは「禁断の地」なのである。
同じであることを原則とする立場からすれば、ネットのサービスなどという新しい島に飛び移るような行為はまさに自殺行為なのである。


この突出すること、目立つことへの意識の差が、いわゆる「村化」の原因ともなっている。

現代ネット社会の「都市」空間と「村」空間 - こころ世代のテンノーゲーム
http://d.hatena.ne.jp/umeten/20080208/p3


ネットでの行動を目立っていると思わない、あるいはそれを自覚しない者。
そして、お互いに自分が持つそれぞれ異なる意見を言うことを「おかしいこと」であると思わない者同士が、結果的にそこに残って集まってしまうことで、同調・共感世界の住人たるフツーの人から見れば、少数グループの集団=村に見えるのである。
この他人と異なる意見を持った、他人と異質な存在であることが明らかになることに、躊躇、ためらい、とまどい、忌避感がなく、それをおかしいと思わなない無頓着さがあってこそ、ソーシャルブックマークの理想が達成されるのも事実である。
とはいえ、さらなるサービスの大型化、顧客の拡大を望むためには、そうした少数派だけに目を向けて入られないというのが現在の段階なのだろう。


そして、そのような「都市」を目指す上で欠かせない観点が、先の記事でも行った「匿名的な身体感覚」である。

現代ネット社会の「都市」空間と「村」空間 - こころ世代のテンノーゲーム
http://d.hatena.ne.jp/umeten/20080208/p3
要するに、「都市」を志向する(ことになる)大型サービスにおいては、いかにして「匿名的な身体感覚」を技術的に再現するかということが、ネックになるということだ。
いかにして、ハンドルネームやidを意識させずに利用を続けさせるか、という問題。
「誰が」ではなく、「何を」にだけ注目させ、個々の人間を組織化、集団化させずにバラバラの個人のままにとどめ、それでいて一律に管理・運営・コントロールができるようにするか。


ならば、匿名性を高めた「増田ブックマーク」でもいいだろうと思うが、それでは今と変わらない。
プライベートモードで使用すればいいだけの話だ。
だが、それすらも高い壁になっているからこそ、議論が尽きないのだろう。


一体、何が壁になっているのか。
「同調・共感意識」を振り返って見て考えるなら、まず、IDなりアイコンなりコメントなりといった形で、他人の存在が見えること自体が問題となってくる。
自分とは違う存在がいることが、そこですでに意識されてしまう。
そのことが、フツーの人の意識からすれば、大問題なのではないだろうか。


そして、もうひとつの「限界領域」という観点から考えてみれば、フツーの人にとって居心地がいいと感じられるツールというのは、あたかも「自分しかブックマークしていない」かのように見えること、「自分しかいない」「自分と同じ人しかいない」という感覚が必要なのではないだろうか。


そのためには、RSSSBMなどのIT技術が自明視している大前提を根本から転倒させる必要があるだろう。
情報収集のため、コミュニケーションのためのツールを使いこなすという、本来のソーシャルブックマークの手段と目的を本末転倒させなければならない。
IT技術がフツーの人の中でこの先生きのこるためには、もはや「役に立つ道具」としてではなく、「フツーにおもしろい」「単純にハマる」といったものにならなければならない。
そして、その上でさらに枝葉末節を飾り立てるのである。


目に見える視覚的な変化を伴うビジュアル的なガジェットとして、「デコレーションブックマーク」とでもいうべき、「まったくもって情報収集ツールだと思えないような形」にしてこそ、はじめてそこでフツーの人に届くのではないだろうか。


お分かりかと思うが、これはある種、ソーシャルブックマークRSSアバター化である。
何年も前にネタで言ったことの繰り返しではあるが、それがもっともフツーに近づくための方法なのではないだろうか。

ぼくがかんがえたはてなブックマーク - こころ世代のテンノーゲーム
http://d.hatena.ne.jp/umeten/20060102/p3


さらに言えば、アバターの本質は、単に自己紹介画像だったものが、それ自体が目的化した自己表現・自己アピールツールになったというところにある。
と言うと、先の「同調・共感意識」と「限界領域」という観点を真っ向否定するものではないかと思われるかもしれない。
だが、モニタ上に表示される画像の視覚的な変化というのは、ファッションやアクセサリーといったリアル世界から地続きになったジャンルである。
決して、島に飛び移るようなものではなかった、「新しいもの」だとは思われなかったからこそ、フツーの人に受け入れられ、いや、むしろフツーの人しか使わないツールとして確立しているのである。


その本末転倒した方向性をブックマークにも付け加えれば、フツーの人はそれこそごく自然についてくるようになるのではないだろうか。
ただし、それはもちろん今のはてなブックマークのような、ソーシャルブックマークではないだろう。
ネット上のサービスについては、「キャズム(溝)を超える」ことが必要だとよく言われる。
だがそうではなく、むしろキャズム(溝)を刻み込み、コアユーザーとライトユーザーを思い切って分断してしまうことこそがフツーの人の中でIT技術が生きのこるための発想なのでは無いだろうか。


例えばアイデアとして、あらかじめ特定のタグごとに振り分けられた画像を設定しておき、そのタグがついたブックマーク数に応じてデコレーションされていく、あるいは「生き物」が進化していくなどがある。
とにかく、「情報を扱う」ためのツールという発想を捨て去り、ブックマークという行為そのものをモノ化、目的化して、「情報サービス」ではなく「情報エンターテイメント」、あるいはもうまったく別の「情報ゲーム」を作り上げるような方向性が、フツーへの道なのではないだろうか。


そのためには、ブックマークコメント機能も思い切って切り捨てる必要があるかもしれない。
とにかく、「クリック」で完結する技術を完成させることがネックなのだ。
フツーの人を前にして、間違ってもキーボードという入力手段があるなどと考えてはいけない。
そもそも、そんなものは、「ない」のだ。フツーの場合。
そうすれば、モバゲーのような感覚で、ワンプッシュ、ツープッシュ程度で楽しめる「はてなケータイ」なんていうサービスができるかもしれない。


そのクリック感を入り口にして、そしてブログのスタイル変更をより簡単に(最大でも2クリック程度で)オリジナル化できるようにしておけば、はてなダイアリー利用者ももっと増えるかもしれない。
例えば、固定カラムのパターンをいくつか用意した上で、カラムごとに背景を設定できるようにして、各カラムごとの画像アップロードフォームを作るなどして、コルクボードにぎっしり写真を貼り付けるような感覚をネット上に持ち込むのもいいかもしれない。


このアイデアを名づけるなら、「はてなブックマークLite」。


どう見てもパクリです。本当にありがとうございました。








……なんかもうこんだけ考えるんならいっそのこと、はてな入りたい!
プログラム一切書けないし読めないけど。
プログラム一切書けないし読めないけど。
(大切なことなので二回言いました)