サイレントテロ 2008


大げさなタイトルの割に、ごくごく小さな話。
「死に体」と「死にたい」は似ているなとつくづく思うこの頃、小さなニュースを発見した。
「サイレントテロ」という言葉が、活字媒体で取り上げられていたのだ。
正確には「サイレント・テロ」という「・」=中黒付きの表記で。


『貧困大国ニッポン』 (宝島社新書)の冒頭1ページ目。そして、結婚難民 (小学館101新書)の第3章だ。


貧困大国ニッポン―2割の日本人が年収200万円以下 (宝島社新書 273)
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4 国民の嘆きの声が如実に伝わってきます
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2 真剣に社会問題を考える人は、これをやめて「アメリカ」の方へ

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4 ロストジェネレーション世代の問題だけじゃない。結婚は損か得か?
5 目新しい視点
1 今はやりの「若者世代格差論」はもう飽きました。



この言葉を作ってから、呆れることに既に4年ほどが経っているわけだが、未だ、自分を含めて誰が大声を上げることもないままである。
にもかかわらず、世間一般の目に触れる場に至るまでじわじわと浸食を続けているこの言葉の力は、我ながら何だろうと思ってしまう。


そう、これは言葉でしかない。批評であるとも目されない、ただのネットの垂れ流しの言葉でしかない。
2006〜2007年の「景気回復」が叫ばれる中でか細い言及をしていた折には、「さすがにこれはバブルjrのゆとり世代に鼻で笑われて終わるだろうな」と、自分自身の愚かさに身をよじっていた。


だが、なんということでしょう!!
世はまさに今、劇的不況ビフォーアフター
メッキが剥げた希望ほど滑稽なものはない。


来年の自殺者は4万人に届くかもしれない。それが現実だ。
自分もその中の一人になるかもしれない。それも現実だ。


どんな行動を取ったところでそれが意味のある反応を得られない以上、それは影さす「沈黙」だ。
どんな言葉を紡いだところでそれが意味のある反応を得られない以上、それはこだます「沈黙」だ。


だが、たとえそうであっても現実を浸食するのが「絶対肯定」というものが持つ力だ。
それに誰が気づかずとも、そもそもが誰に気づかせることなく破壊をもたらす力だ。


現実・現在に必要な批評する言葉とは、「動物」がごときおもねった貧弱な現実肯定ではなく、現実に対する諦観に貫かれた「絶対肯定」だ。
「起きていることはすべて正しい」という軽薄な啓発ビジネスライフハックすら飲み込む「絶対肯定」だ。


「沈黙」は力だ。破壊の力だ。