水俣病「加害者救済」法案――なぜ水俣病が即座に公害認定されずに放置されたか


なんかもうなし崩し的に成立させられそうな気配ではあるが。


ちなみに、なぜ水俣病が即座に公害認定されずに放置されたかについてはこの本に言及がある。


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曰く、

<p54-60、二章 2 水俣より>


*1953年頃より発生。
発生から3年後の56年には原因がチッソ工場からの排水であると特定される。
さらに発生から6年後、1959年までの時点で工場廃液が原因との確証は多岐にわたるまでに確定し、有機水銀の毒性の研究も解明される。
59年11月の厚生省水俣病食中毒部会でチッソ水俣工場が原因であることを示す答申が出される。
しかしその翌日、通産大臣池田勇人水俣病の原因が企業の公害であると断定することを「早計」であると一蹴する。
*この政治的留保によって、その後さらに9年間に渡って排水流出は続き、60年代後半までに被害地域が拡大する。


池田勇人は60年には内閣総理大臣に就任し、その中で「高度経済成長」政策をとった。
*その柱のひとつである「農業の近代化」のために、チッソが大量に生産していた窒素肥料は絶対に欠かせない物だった。


1968年、発生から15年後、留保から数えても9年後、公害の原因を認める政府見解が出される。


チッソと同型のアセトアルデヒド関係工場は、この一九六八年を以て、相次いで生産を中止している。時代の基本的な流れであった電気化学から石油化学への転換の中で、この年旧式の製造工程が、最終的に「用済み」になったのである。つまり、被害を予防することにとっては全く意味が無くなった時点になって、初めて原因が認定されている。生産の効率優先という政策のテレオノミー(目的志向)の、露骨な貫徹である。」(p59-60)

この事実を見るに、水俣病は企業公害というよりも、国家主導の犯罪に等しい。



ツイッターで実況中継された審議会の様子>
nagano_haru - 6/29 [水俣病の救済策について]記者会見 in twitter by@minori_okd
http://naganoharu.tumblr.com/post/132261884

<要点>
患者が救済されない“救済策”ってなんなんでしょう?


しかも、加害企業チッソに救済のテーブルにつかせるために、チッソの要求に譲歩して”分社会”を法案に組み込むって、おかしくないですか?


患者援者の声、「民主党はどうして、与党案と協議するわけ?(今まで反対していたのに)自分たちが次期政権をとったとして、その前に水俣病を終わらせおきたいのだろうか」(国会者中継を見た支援者の声)


「松野議員の発言によると、官僚がカネをつぎこんで、御用学者がつまらない報告をだし、資料の保存の仕方もずさん。認定基準もひどい。それは切り捨てるだけのもの、と発言。」


杉本たけしさん(患者):上京者のなかで最年長。「国会の言葉は美しく、立派だけど、53年間、患者は十分な補償はされてこなかった。仕方ないと遠慮してきた。今になって、チッソが分社するのは、患者を補償する会社を、将来的になくそうという魂胆が見えている気がする。」


「やっと、患者も法案がおかしいと気がついた。国会には、患者(認定&未認定)することを確実にしてほしい」「5月1日に家内(杉本栄子さん)に〜を約束した」水俣病患者 まつながさん、発言中。「法案は許されるものではない。それをいうために上京した」「たくさんの患者がいるにも関わらず、加害企業をなくそうとしている。許されるものではない。安心できる救済をつくってください。」


松永さん:健康な体で生まれたかったのが本当の気持ち。なぜ、チッソや国は、昭和34年の猫実験で、原因が有機水銀とわかっていながら、排水をとめなかったのか。とめていたら、私の被害はなかったのか、とすごくうらみ、にくんだ。 人は間違ったことを素直に認めて、とめるべきところは、とめるべき


柳田さん:分社化は、チッソ本体が、責任を免除されることですから、チッソ救済法案といっていいほど。めざすべいは、被害者救済であって、チッソ救済ではない。 チッソが倒産しては元も子もないが、まずは被害者救済。。


<審議会を中継した方の記事>
味(み)海苔の実 minorinomi: 国会での記者発表をツイッターでレポート
http://yummyseaweed.seesaa.net/article/122496122.html

“救済法”と聞けば、なんだか、いい法律のようですが、
この法案に、水俣病患者や支援者が反対しています。

ある人は、障害者自立支援法と同じだといいます。
法律の名前はいいが、実態は、最悪だという点が、今回の、水俣病特措法と共通するのでしょう。

asahi.com朝日新聞社):民主、チッソ分社化容認 水俣病救済法案成立へ前進 - 政治
http://www.asahi.com/politics/update/0630/TKY200906300148.html


手足がしびれるなどの症状がありながら水俣病と認定されない被害者らの救済をめぐって与野党が進めている法案の修正協議に関連し、民主党幹部は30日、原因企業チッソの分社化について、「補償金が出るのであればのまざるを得ない」と記者団に述べた。与党側が「絶対に必要」としていた最大の争点で合意する見通しとなり、法案の今国会成立に大きく前進した。

 この幹部は記者団に「明日(1日の与党との協議で)決着させる」と明言した。水俣病未認定患者の救済をめぐっては、与党と民主党が今国会にそれぞれ独自の法案を提出。これまでの修正協議では、救済対象者の症状などで歩み寄る部分はあったが、分社化については、民主党が「救済終了まで凍結する」との立場を崩していなかった。

 分社化は、補償で多額の公的債務を抱えるチッソを補償部門(親会社)と事業部門(子会社)に分け、業績のある子会社株の売却益を債務の返済や救済資金にする仕組み。被害者からは「補償が完全に終わらないうちに加害企業がなくなるのはおかしい」との反発の声も上がっている。