【国際】「一般のイスラム教徒が窮地に」中東諸国懸念
フランスで相次いだ銃撃事件の犯人がイスラム教徒だったことから、同教徒が大多数を占める中東各国の政権は、
欧米での反イスラム感情が急速に高まる可能性もあると強い警戒感を示している。ただ、イスラム過激派勢力は、「イスラム教預言者への侮辱」が動機だった点を強調し、攻撃を称賛した。
「虐殺や暴力、過激主義を振りかざす者たちが、イスラム教への恐怖心を拡大させている」。イランのロハニ大統領は9日の演説で、
事件によって、イスラム諸国やイスラム教徒全般への悪評につながると懸念を示した。
トルコのメディアによると、エルドアン大統領も「テロに宗教は関係ない」と述べ、警戒感を示した。中東諸国は、2001年9月の米同時テロをきっかけとした「反イスラム感情」拡大の再来を恐れる。
同時テロでは、首謀者である国際テロ組織「アル・カーイダ」の指導者ウサマ・ビンラーディンやテロ実行犯が中東出身のイスラム教徒だったことから、
事件後、欧米では中東出身者に対する規制やいやがらせが増大した。ただ、今回、アラブ諸国の指導者が、フランスでの銃撃事件を直接批判する発言はほとんど伝えられていない。
「風刺画によるイスラム教の冒涜(ぼうとく)」とされる犯行の動機に理解を示す傾向も強いからだ。ヨルダン大学のアーメル・サバイレ教授は、「中東の為政者が公式に、襲撃を全否定してみせるのは難しい。
預言者冒涜を容認したと受け取られかねない上に、根強い反欧米感情を抱く国民から、欧米寄りと批判される危険もある」と指摘する。一方、アル・カーイダや「イスラム国」といったイスラム過激派勢力は事件を称賛する姿勢を鮮明にしている。
AFP通信によると、イスラム国が運営するラジオ局「バヤン」は8日、犯人を「英雄」とたたえた。ロイター通信によると、
北アフリカを拠点とする過激派組織「イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ組織」も8日、ツイッターで犯人を「真の戦士」とした。これに対し、「イスラム過激派は、今回の襲撃事件を組織の勢力拡大に利用するだろう。
その一方で(一般の)イスラム教徒は窮地に陥るだろう」(サウジアラビアのシャルク紙)との懸念も強まっている。