モンゴルのマンホールチルドレンはどこへ消えた?
謹慎だ、厳罰だと極めて馬鹿馬鹿しい文脈で毎日その名が取りざたされているモンゴルであるが、さて、数年前のニュース特集では、モンゴルにまつわる報道は実に凄惨な現状を告げる文脈のものであった。
マイナス40度にもなる極寒のさ中で、親を失った子供たちが寒さをしのぐために下水のマンホールで生活をしている――
そのショッキングな映像と悲惨な実態は繰り返して報じられ、その扱いもかなり大きなものであったと記憶している。
が、今その話を聞くことはまったくない。
これほど毎日モンゴルの国名を聞くというのに、そのモンゴル社会の問題としてあれほど大きくいわれていたマンホールチルドレンの報道がなされないのはいったいなぜなのか。
聞けば、バブルだ、開発だ、成長だ、と実に景気のいい話ばかりである。
いったいどうなっているのか。
調べてみた。
すると、真っ先に見つかったユニセフの情報には、こんなことが書かれていた。
モンゴル(ストリートチルドレンを守ろう、減らそう)
http://www.unicef.or.jp/kodomo/nani/bokin/bo_04a.htm
日本ユニセフ協会学校事業部のモンゴル指定募金のテーマは、2005年までは「ストリート・チルドレンを守ろう、減らそう」。2006年からは「移動生活の子どもたちを守ろう」になりました。
どうやら、支援運動のレベルでも、すでに質的な大転換が済んだ状況のようである。
1999年の時点では、非常に大きな問題として、
ユニセフ図書館>ユニセフ子ども物語
http://www.unicef.or.jp/kodomo/lib/lib2.htmモンゴル国「エンサイハンの夢」 [スタディツアー報告/ストリートチルドレン]
http://www.unicef.or.jp/kodomo/teacher/pdf/st/st_13.pdf
2005年の段階でも、非常に大きな問題として扱われていたことは確かである。
「モンゴルにて、マンホールチルドレンの生活の現状、求職の事情について現地調査」|エム・クルー
http://www.mcrew.co.jp/news/20050225.html
モンゴル - 支援地域を知る|NGOピース ウィンズ・ジャパン
http://www.peace-winds.org/jp/labo/mongolia.html
それらのデータを見るに、99年には失業率が20%とあるが、現在の情報によれば<外務省: モンゴル国>なんと、3.3%(2006年速報値)にまで激減しているという。
ちなみに、日本の失業率は2007年現在で4%である。*1
確かに、今のモンゴルは日本よりも景気がいいようだ。
その経済の成長と安定とあいまってか、どうやら2006年までの支援活動によって、このマンホールチルドレン問題はほぼ解決のめどがついたらしい。
日本ユニセフ協会・世界の子どもたち > 世界の子どもたちは今のページにも、モンゴルの国名は登場していない。
解決したのか……と思ったが、やはりそうでもないようだ。
NPO法人 アジアチャイルドサポート 事務局 モンゴルでの取り組み
http://www.okinawa-acs.jp/action/mgl/index.html
現在は欧米や日本などの民間団体や、国営の児童救済施設が設立され、多くの子供達が保護されたことで、マンホールに暮らしている子供は激減しました。
しかし、新たなる問題が発生しています。モンゴルの首都ウランバートルは1990年代半ば人口60万人余りでしたが、現在は90万人近くに急増しています。地方に暮らす遊牧民が、冷害などの異常気象により家畜が死滅し、生きていくことが困難な状況に陥り、都市部へと移り住んだのです。
急激な人口増加は深刻な社会問題となり、暴力や犯罪は以前にも増して多発しています。
町に移り住んだ遊牧民の殆どは最貧困層で、かなりの人々が住宅を借りる資金も無く、マンホールの中で暮らし始めていて、マンホールチルドレン問題から、マンホールファミリー、マンホールアダルトへの問題と転化しています。
小ぎれいなモンゴル市民の姿ばかりがテレビには映されるが、やはりその影で忘れ去られた人々がいるという現実をこそ、わざわざモンゴルに行くマスコミ各社は報じるべきではないのだろうか。
――もちろん期待はしていないが。
<追記>
コメント欄にていただいた情報で、上記に加えてまた別の問題も発生していることがわかりました。
【動画】ウランバートル、ストリートチルドレンが減った理由 国際ニュース : AFPBB News
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2258490/1855297
7月23日 AFP】社会主義体制の崩壊後、首都ウランバートル(Uran Bator)で激増したストリートチルドレンの数は、現在減少傾向にあるという。しかし、活動家たちはその理由について、性産業に巻き込まれる少女が増えたためだと指摘する。(c)AFP
朝青龍でも旭鷲山でも、どちらでも、その事業家としての力をこうした問題に割いてもらいたいものです。
モンゴルとは決して日本と無縁ではない。
モンゴルを旅する時は手放せない
*1:図録▽失業率の推移(日本と主要国) http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/3080.html