『パルムの樹』――素人にはオススメできない

アマゾンレビューでも賛否二分しているこのアニメ。ASIN:B000075AVQ
意外に面白く感じたのは、今の自分自身が病んでいるからか。それとも、前に友達からステキ*1アニメだという感想を聞いていたからか。
それにしても、この『パルムの樹』は、アートアニメに分類されてしかるべき作品だろう。


ファンタジックチルドレン』もちょっと前に見たし、とりあえずこれで「なかむらたかし監督作品」の傾向と対策は分かった。
一言で言うと、「素人にはオススメできない。」


それにしても、これでピノキオを自称するのはかなり詐欺的じゃないのか。
確かに、主人公のロボットは木で作られていて、「人間になりたい」と言い出すのだが、「ピノキオ」という言葉でイメージされる健全さや明るさがほとんど見受けられないのは、すでに万人が指摘するところなので言わずもがななのだがそれでも言いたくなるくらい、暗い。
ジャパニメーションピノキオといえば、他に『人造人間キカイダー』を挙げることが出来るが、これもまたなんか暗いなあ。なんで日本人がピノキオを扱うと、こうも暗くなってしまうのだろうか。*2
ヒューマニズム=人間中心主義の限界が知らしめられた時代に作られたからなのか。それとも、「キリスト教的倫理観」においては、その自然と人間を二分する思考法の下で、人間(人間化すること)に対する無条件の肯定感があったことが、ピノキオのそもそもの幸福感なのか。
対して、日本やアジア的な宗教観だと、「木は木のままですばらしい」ともなり、それが、ピノキオの人間化というモチーフの変容の根源にあるのであろうか。
……こういう、日本文化論=西欧文化論は好きではないのだが。


また、この『パルムの樹』の印象的なシーンを挙げると、それらがすべて過去のアニメ作品へのオマージュとして見えてもくる。
なかむらたかしが制作に参加した『ナウシカ』からは、その世界観を、同じく『AKIRA』からはクライマックスの怪物を、といえるだろうか。
そして、何よりも感じたのが、これは『天使のたまご天使のたまご [DVD]じゃないのか、という印象であった。


巨大な魚が浮遊する青を基調とした「文明以後」の世界で、青い顔の剣士に守られた主人公が、卵を抱えてどこか世界の中心へ向かってさ迷い歩くという、そのすべてが、押井守の『天使のたまご』へのオマージュなんじゃないのか、あるいはアンソロジーなのか、という思いを掻き立てた。
だからこそ、難解な――というか不明瞭な物語にも「納得」し、大いに度量を広くもって見ることが出来たのかもしれないが、『パルムの樹』が完全に『天使のたまご』にならなかったこともまた、確かである。
先に、アートアニメと言ったが、これは商業アニメとしてギリギリのところで踏みとどまった作品であると言える。
それには、『ナウシカ』や『AKIRA』に救われたという面もあっただろう。だが、なかむらたかしオリジナルの、ややもすれば病的なまでの内面描写や、爽快な(?)アクションが、過去の作品の臭いをうまく消す働きをしていた面も大きい。
特に、この監督は子供をいじめさせたら日本一であるといえるかもしれない。
――この辺りのセンスを、もやはロボットアニメとしてもサブカルアニメとしてもグダグダの域に陥っている『エウレカセブン』は、爪の垢でもせんじて飲むべきである。


この作品に現れた監督の思考や志向が、商業アニメとして洗練された――取捨選択された――結果が、『ファンタジックチルドレン』であることは確かである。
だからまあ、もし見るとすれば、一般の人なら『ファンタジックチルドレン』の方を見たほうがいいと思うけど、そこにもまた、なかむらたかし一流の「ラブストーリー」が待ち受けているという罠。
やっぱり、「素人にはオススメできない。」

*1:狂ったとかオカシイとかいうニュアンス

*2:アニメ2作品しか挙げていない時点でどうかと思うがそれはご愛嬌