期待される「市民記者」像と、市民記者の現実
「オーマイニュース」市民記者規約を参考に、期待される「市民記者」像と、市民記者の現実というものを考えてみたいと思います。
まずは、オーマイニュースによる「市民記者とはなにか」についての簡単な説明。
市民記者とは
・あなたが書いた記事をオーマイニュースに投稿できます。
・掲載された記事は、掲載個所によって定められた原稿料が支払われます。
・オーマイニュースに掲載された記事へのコメント「この記事にひと言」を書き込むことができます。
・市民記者登録はすべて無料です。
<メリット>
原稿料が発生するという点。
帰属感を求める人の場合はそれもひとつのメリットとなるか。
<ポイント>
記事をネット上にUPするなら、ブログでもHTMLでもSNSでも同じこと。
「実名を登録する」のは、ブログホスティングサービスへの登録でも同じこと。
<当初抱いていた暖かい思い>
新聞記者経験をもつプロの編集部がプロの技を駆使して編集・校正を行うことによって、質の高い文章が掲載される。
<寒い現実>
編集部の私怨を晴らすために、自称「罵倒芸」を駆使する市民記者が利用され、「スケープゴート」兼「鉄砲玉」として利用されている。
■「オーマイニュース」市民記者規約
オーマイニュース・インターナショナル株式会社「オーマイニュース」市民記者規約(以下「本規約」といいます。)は、オーマイニュース・インターナショナル株式会社(以下「当社」といいます。)が提供するWebメディアサイトである「オーマイニュース」(ohmynews.co.jp)にて、市民記者が作成した記事を掲載する、いわゆる「市民記者制度」および「この記事にひと言」欄の利用に関する、当社および市民記者が遵守すべきルールと役割を定めるものです。
当社は、本規約に関する条項の追加、削除、特約等の条件および倫理綱領、行動指針その他の市民記者が遵守すべき指針(以下「個別規定」といいます。)を別途定めることがあります。この場合、個別規定は本規約の一部を構成するものとします。
市民記者登録を行う前に本規約をよくお読みいただき、ご理解していただいたうえで、本規約に同意の上、市民記者登録を行っていただくようお願い申し上げます。
なお、当社は、市民記者の承諾を得ることなく、当社所定の方法をもって市民記者の皆様に通知することにより、本規約を変更することがあります。その場合、市民記者は変更後の規約に従っていただくものとします。
これを前提にして以下条文が続きます。
第1条(定義)
(1)「当社ウェブサイト」とは、当社がohmynews.co.jpのドメインで運営するウェブサイトをいいます。 このドメインが変更された場合は、当社が当該変更後のドメインで運営するウェブサイトを含みます。
(2)「市民記者」とは、当社ウェブサイトに記事を投稿する資格および「この記事にひと言」欄にコメント等を投稿する資格を得た方をいい、本規約に基づき当社との間で市民記者登録が完了した方をいいます。
(3)「市民記者登録」とは、当社・市民記者間の本規約に基づく契約およびそれに伴う登録行為をいいます。
(4)「投稿記事」とは、市民記者が当社に投稿した記事をいい、編集済み記事と未編集記事の両方を含みます。
(5)「編集済み記事」とは、投稿記事のうち、当社による編集作業を経て、当社ウェブサイトに掲載された記事をいいます。
(6)「未編集記事」とは、投稿記事のうち、当社ウェブサイトに掲載されなかった記事および当社による編集作業を経ずに当社ウェブサイトにおける「ニュースのたね」ページにて掲載された記事をいいます。
(7)「原稿料」とは、編集済み記事に関する本規約に定める権利帰属の対価として、当社が市民記者に支払う金銭をいいます。
(8)「「この記事にひと言」欄」とは、当社ウェブサイト上に展開されている記事や様々な話題について意見、感想その他表現行為(以下「コメント等」といいます)を投稿することができる機能をいいます。
オーマイニュース用語の定義。
オーマイニュースと市民記者の関係は、なんらかのコミュニティ――運命共同体なのではなく、登録関係に過ぎないことが示されています。
ここからわかるのは、市民記者は「鵜飼いの鵜」ですらない、ということです。
市民記者とは、言うなれば「公園のハト」なのです。
オーマイニュースと市民記者の関係とは、豆をまかれたので寄っては来たが、豆まく人は気まぐれに脚輪をつけることはあっても、ハト小屋を与えたり、ハトを外敵から守ることなどは決して行わない、といったものなのです。
第2条(市民記者登録の申請)
1.市民記者登録の申請は、誰でも行うことができます。但し、市民記者の登録をされる方は、次の事項にご注意ください。
(1)投稿記事が採用された場合、原則として市民記者の実名をもって当社ウェブサイトに掲載されます。
(2)投稿記事が採用された場合、当社ウェブサイトに編集済み記事として掲載された時点をもって、当該編集済み記事の著作権は、市民記者と当社との持分均等による共有となります。
(3)投稿記事が採用されなかった場合も、当社ウェブサイトに「ニュースのたね」ページにて掲載されることがあります。この場合、当該未編集記事の著作権は市民記者に留保されますが、市民記者は、当社の未編集記事の利用について別途本規約に定める許諾を行っていただきます。
(4)当社は、市民記者の投稿記事に、自由に編集することができるものとします。
(5)投稿記事の形式、投稿の方法等に関しては、当社の定めるところに従っていただきます。
(6)当社の市民記者に対する原稿料の送金先は、日本国内の金融機関の預貯金口座に限らせていただきます。
(7)未成年、成年被後見人、被保佐人または被補助人のいずれかの方は、市民記者登録の申請の際に法定代理人、保佐人もしくは補助人の同意を得た上で行ってください。また、13歳未満の方は、原稿料の送金先口座として法定代理人(例えば、ご両親)名義の口座、あるいは法定代理人の指定する13歳未満の方ご本人の口座を登録しなければなりません。
2.市民記者登録の申請は、予め本規約に同意の上、市民記者になろうとする方(以下「申込者」といいます。)自身が当社指定の方法および書式により、当社に対して行うものとします。
3.申込者は、市民記者登録の時に入力した個人情報が正確であることを、当社に対し保証するものとします。
4.申込者は、市民記者登録の時点において、当社が申込者の指定した送金先口座の金融機関に対して登録された情報が真正かを照会し、当該金融機関がその照会に応じることを予め許諾するものとします。市民記者が登録事項の変更を行おうとする場合も同様とします。
「ご注意ください」のあとに続くのは、重ね重ね著作権の問題です。
決して市民記者の身分についての社会的保障をうたったものではありません。
むしろその逆で、オーマイニュースは断固たる、確固たる個人情報の提出を要請しています。
トラブル発生時に必要となるセーフティネットのかけらも見せずに、「顔出し」だけを要求しているように思えます。
第3条(市民記者登録の完了)
1.申込者が前条の市民記者登録の申請を行った後、当社は、その申請を受理した場合、市民記者登録申請受理の案内を当社所定の方法により通知します。
2.前項に定める市民記者登録申請受理の案内通知に記載する当社所定のログイン画面のURLをクリックした時点をもって市民記者登録が完了し、申込者は市民記者の資格を取得するものとします。
3.市民記者登録の費用は無料です。
4.当社は、申込者が次の各号のいずれかに該当する場合には、市民記者登録をお断り申し上げることがあります。
(1)申込者が市民記者登録を申請した際の申告事項に、虚偽の記載、誤記、または記載漏れがあったとき。
(2)申込者が未成年、成年被後見人、被保佐人または被補助人のいずれかであるにもかかわらず、申込の際に法定代理人、保佐人もしくは補助人の同意を得ていなかったとき。
(3)申込者が市民記者登録の申請時に指定した送金先口座の名義人が、申込者の氏名(申込者が13歳未満の場合は、申込者の法定代理人の氏名)と異なるとき。
(4)申込者が市民記者登録の申請時に指定した送金先口座が解除され、あるいは金融機関によって入出金停止等の措置が講じられている等の事由により、当該口座の利用ができないとき。
(5)申込者が、市民記者登録の申請時に指定した送金先口座が、日本国内の金融機関の預貯金口座ではないとき。
(6)申込者が、過去に不正投稿等により市民記者登録を抹消されたことがあるとき。
(7)申込者の市民記者登録の申請を受理することが、当社の業務の遂行上または技術上著しい支障があると当社が判断したとき。
重ねて正確な個人情報の提出を要請するオーマイニュース。
市民記者が有するメリットよりも、市民記者に課される規則、そして罰則についてより多くが語られているという印象が否めません。
第4条(登録事項の変更)
1.市民記者は、市民記者登録の申請時に当社に届け出た内容に変更があった場合には、速やかにその旨を当社所定の方法により当社に届け出ていただきます。
2.当社は、当社の裁量により必要と判断した場合には、市民記者に対し、前項に定める変更内容を証する書類の提示を求めることができるものとします。
3.当社は、前項の規定により変更申請を承諾した場合は、当社が定める日から変更された事項を適用するものとします。
4.本条に定める変更の届出等が行われなかったことにより市民記者に生じた不利益は全て市民記者の負担となるとともに、かかる事由により当社に損害が生じた場合には、市民記者はこれを賠償するものとします。
さらに引き続き市民記者に求められる規則。
「オーマイニュースは市民記者の身分を持った方にこういうことをします」ではなく、「市民記者となったからにはこうしなければならない」という文句が非常に目に付く気がします。
第5条(記事の投稿)
1.市民記者は、当社に対して記事を投稿します。投稿は、原則として当社所定のウェブサイトから当社所定の書式を用いて行うものとします。
2.投稿記事は、原則日本語で記述していただきます。
3.投稿記事は、市民記者本人が実名をもって投稿していただきます。
4.当社は、文章、画像、音声、映像、図形その他投稿記事の一切を自由に編集することができるものとし、市民記者は、当社のかかる行為につき予め同意し、著作者人格権を行使しないものとします。
5.市民記者は、当社の自由な裁量により、当社が前項に基づき編集を行った後の投稿記事を当社ウェブサイトに掲載して公表すること、およびその場合に当該記事の投稿者として市民記者の実名が表示されることにつき予め同意し、著作者人格権を行使しないものとします。
第6条(投稿記事の掲載等)
1.当社は市民記者から投稿された記事について、当社ウェブサイトへの掲載の採否を決定し、また、掲載する場合は当社ウェブサイトのどのカテゴリ、どのページに掲載するかを決定し、編集作業を行った上で当社ウェブサイトへ掲載します。当該投稿記事は、当社ウェブサイトに掲載された時点で、「編集済み記事」として取り扱います。
2.前項に定める掲載の採否に関する決定権は当社にあるものとし、市民記者は当該決定についてなんらの請求または異議申立を行えないものとします。また、当社は、市民記者からの投稿記事について、必ず掲載することを保証するものではありません。
3.当社は、編集済み記事以外に投稿記事を当社ウェブサイトにおける「ニュースのたね」ページにて掲載することがあります。この掲載の有無・採否についても、前項と同様とします。
4.当社は、市民記者が予め登録した電話番号等を用いて市民記者に連絡し、投稿記事の内容、根拠資料、情報源等について問い合わせを行うことがあります。市民記者は当社がこのような連絡を行うことを予め許諾し、かつ当社の問い合わせに対して真摯にご回答いただきます。
5.当社は、市民記者からの投稿記事の内容について、投稿記事に含まれる人物への反対取材を含む裏付け取材を行うことがあります。市民記者はこれを予め許諾し、当社から要請があったときはこのような取材に誠実にご協力いただきます。
6.当社が当社ウェブサイトへ投稿記事を掲載する場合、原則として市民記者の実名をもって掲載します。あわせて、市民記者が事前に公開を承諾した市民記者のプロフィール等を掲載します。市民記者は、当社がこれらの行為を行うことを予め許諾するものとします。なお、特別の事情がある場合には、当社の判断により匿名またはペンネームによる投稿記事の掲載を認める場合があります。
記事の投稿とその後の編集について。
「文章を掲載する/される」ということについては神経を尖らせているようであるが、「掲載される基準」や「文章レベル」や「編集の内容」などについては、たとえそれが市民記者であっても社外秘ということなのでしょうか。
プロ集団であるとの自負を除かせている部分が、「当社は、市民記者からの投稿記事の内容について、投稿記事に含まれる人物への反対取材を含む裏付け取材を行うことがあります。」という文章だが、この宣言を履行した事例はあるのでしょうか?寡聞にして知りません。
また、一応、匿名での記事掲載も認めているようではあります。
しかし、あくまで「特別の事情がある場合には、当社の判断により」と、オーマイニュース側の判断がすべてであり、基本的に「市民記者は当該決定についてなんらの請求または異議申立を行えないものとします。」とされているので、当然ながら、匿名を希望してもそのハードルはきわめて高く設定されているようです。
第7条(著作権の帰属)
1.投稿記事に関する著作権の帰属については、次のとおりとします。
(1)未編集記事の著作権は、市民記者に帰属するものとします。
(2)編集済み記事の著作権(著作権法第27条および第28条に定める権利を含みます。以下同様とします。)は、当社ウェブサイトに掲載された時点をもって、市民記者の新たな意思表示を要することなく市民記者と当社との持分均等による共有となります。
2.市民記者は、投稿記事について当社に対して著作者人格権を行使しないものとします。
3.市民記者は、掲載の有無に関わらず、当社が投稿記事について、国内・国外を問わず次の行為を行い、あるいは第三者をして行わせることをあらかじめ当社に対し包括的に許諾するものとします。
(1)投稿記事を編集すること。
(2)投稿記事を複製すること。
(3)投稿記事を韓国語、英語その他すべての言語に翻訳すること。
(4)投稿記事をデータベース化して保存すること。
(5)一度当社ウェブサイトに掲載された編集済み記事を再使用すること。一度未編集記事として取扱われた記事を、その後において編集済み記事として掲載すること。
(6)株式会社オーマイニュースが提供するサイト(ohmynews.com)に投稿記事を掲載すること。また、将来において当社または株式会社オーマイニュースまたはその子会社、関連会社その他の第三者が、地域を問わず「OhmyNews」の名前を用いて提供するサイトに投稿記事を掲載すること。
(7)投稿記事を商業目的いかんに関わらず、また、紙形式、データ形式等媒体の形式いかんに関わらず、当社の計算において一般公衆に対して出版、放送、公衆送信すること。
(8)投稿記事を、当社の計算において第三者に販売すること。
4.当社が未編集記事につき前項第5号後段から第8号までに掲げる行為を行った場合、当該行為の時点から当該投稿記事は編集済み記事として取り扱われ、著作権の共有、原稿料の支払いその他編集済み記事に関する本規約の規定が適用されるものとします。
5.すでに原稿料支払いの対象となった編集済み記事に関しては、当社が重ねて前項各号に掲げる行為を行った場合であっても、追加の原稿料等は発生しないものとします。
「著作権と著作権料」について。
オーマイニュースが考える市民記者との問題は、どうもこれだけのようです。
第8条(サービス利用環境の維持)
1.市民記者は、記事を投稿するために必要なパソコンその他の端末機器および通信回線等を自己の費用と責任をもって管理し、またインターネットに接続するために必要な電気通信サービス、インターネットサービスプロバイダとの契約を継続する等、必要な利用環境を自己の費用と責任をもって維持するものとします。
2.前項に定める利用環境が維持されなかったために市民記者が記事を投稿できなかった場合や「この記事にひと言」欄にコメント等を投稿できなかった場合であっても、当社は一切責めを負わないものとします。
まあ、あってもなくてもいいような、でもまあ書いといたほうがいいかもね、という項目。
第9条(ID・パスワードの管理)
1.市民記者は、当社に登録したユーザーIDおよびパスワードを自己の責任において厳格に管理するものとします。
2.市民記者は、ユーザーIDおよびパスワードを他人に開示したり、他人に使用させてはならないものとします。なお、ユーザーIDの譲渡、貸与、名義変更等は一切できません。
3.市民記者は、ユーザーIDおよびパスワードを忘れた場合や第三者に知られた場合には、速やかに当社に届け出るものとします。
4.当社は、ユーザーIDおよびパスワードを用いて当社のシステムにログインされた場合、その後ログアウトまでの一連の通信は当該ユーザーIDおよびパスワードを付与された市民記者本人によって行われているものとみなすことができるものとし、ユーザーIDおよびパスワードの盗用その他の不正利用が行われた場合であっても責任を負いません。
市民記者のネットセキュリティに関する「規定」。
しかし、銀行ですらカードの不正使用に関しては一部非を認めるようになったご時勢、「市民記者本人によって行われているものとみなすことができるものとし、ユーザーIDおよびパスワードの盗用その他の不正利用が行われた場合であっても責任を負いません。」という態度は、実に自民党経団連的な「自己責任」精神にあふれた態度であるといえましょう。
確か、産経出身者が主催してるんでしたっけ?オーマイニュースって。
第10条(禁止行為)
市民記者は次の行為を行ってはならないものとします。
(1)コンピュータ・ソフトウェア、ハードウェア、もしくは通信機器の機能を妨害、破壊、制限するコンピュータ・ウイルスその他の有害なコンピュータ・プログラム、コンピュータ・コードまたはファイルを含む情報を投稿、送信する行為
(2)当社ウェブサイト上の情報を改ざんする行為
(3)当社ウェブサイトの運営を妨害する、または妨害するおそれのある行為
(4)本人であることを隠し、他の人物またはその他を装うこと、および実在の人物関係を不正確に述べる行為
(5)法律または契約に基づき送信する権利を持たないコンテンツを投稿または送信する行為
(6)送信アドレスを偽る行為
(7)要求されていない大量の電子メールを送る行為および一定のデータ容量以上のデータを当社に送信する行為
(8)他人のユーザーIDおよびパスワードを盗用する行為
(9)法令に反するもの、虚偽の内容のもの、わいせつなもの、他人の名誉を毀損するもの、他人のプライバシーを侵害するもの、脅迫・嫌がらせ目的のもの、誹謗中傷するもの、他人の著作物を盗用・無断転載するもののいずれかに該当する情報を投稿または送信する行為、または市民記者もしくは投稿記事に関して当社に虚偽の情報を提供する行為
(10)その他当社が不適切と判断する行為
市民記者に課せられるネットセキュリティの「規定」。
どうにも市民記者には、「あれはできない」「これはしてはいけない」との文句が多く投げかけられている気がしてなりません。
第11条(原稿料)
1.当社は、編集済み記事に関する本規約に定める権利帰属の対価として、市民記者に対して当社所定の原稿料を支払います。
2.原稿料の金額は、別途当社が定めて当社ウェブサイトに掲載するとおりとします。
3.当社は、市民記者に対し、原稿料以外の市民記者の取材費、交通費等の経費その他の費用・報酬等は一切支払わないものとします。
第12条(原稿料の支払方法)
1.当社は、市民記者の原稿料の累積金額が5,000円に達するまで、当該市民記者に対する原稿料の支払いを留保できるものとします。
2.当社は、毎月末日(当日が金融機関の休業日の場合は翌営業日)を締日として、当該締日の時点で原稿料の累積金額が5,000円に達した市民記者に対して、当該締日の翌月末日に当該市民記者が指定した金融機関の口座に原稿料全額を振り込む方法により支払います。
3.前2項の定めにかかわらず、当社は、市民記者から特に請求があったときは、原稿料の累積金額が5,000円に達していない場合であってもその支払いを行います。この場合、当社所定の事務手数料を負担していただきます。
すべての取材は自己責任と自己負担で行い、しかもその代償は5000円以下は支払い不可。
実費と時間的拘束が、原稿料によってまかなわれるとはとても思えません。
もちろん、請求すれば支払われるそうですが、事務手数料が別途必要という、市民記者に対してではなく自社経営に優しいオーマイニュース。
市民記者というのは何か崇高な使命感をもった奉仕精神の持ち主の勤めなのでしょう。
そういえば、奉仕活動が大切だと政府自民党の方々はいつもおっしゃっていますよね。
第13条(市民記者の責任)
1.市民記者は、投稿記事が他人の名誉・信用を毀損せず、第三者の著作権その他の権利を侵害しないこと等、法的に瑕疵のないものであることを保証するものとします。
2.市民記者は、投稿記事の内容および記事から派生した結果につき自ら責任を負うものとします。但し、当該投稿記事に対する当社の編集にもっぱら起因して発生した結果についてはこの限りではなく、当社が責任を負うものとします。
3.万一、投稿記事に関連し、第三者が損害を受けたものとして、当社に対して当該第三者から何らかの請求がなされまたは訴訟が提起された場合、当社は自ら責任をもって当該請求または訴訟に対応します。この場合、市民記者は当社に対して最大限の協力を行っていただきます。
4.前項において、当社が第三者に対して当該請求または訴訟に対応した結果、損害賠償金、和解金を支払う等の損害を被り、または弁護士報酬、訴訟費用その他費用を支出した場合には、市民記者は当社の損害を賠償し、かつ当社が支出した費用を当社に補填するものとします。但し、市民記者に故意または重過失がない限り、この責任は50万円を上限とします。
「編集部の不用意な掲載許可の判断によって自らの人権が否定されるような事態が発生した」という訴えが発生した場合は、はたしてどのような対応を取られるのでしょうか?疑問です。
あるいは、書き手としての未熟さをそのままにして、その書かれたものを「ジャナーリズム」の看板で出すことに対して、躊躇はないのでしょうか?
そして、ジャーナリズム活動において重要な訴訟リスクに関する項目がここに。
しかし、書かれているのはあくまで「オーマイニュースが訴えられた場合」に限られていることは、注意しなければならないでしょう。
つまり、市民記者個人が訴えられた場合、あるいは何らかの損害をこうむった場合には、オーマイニュースはなんらその保障をすることはないのです。
対して、オーマイニュースが裁判で負けたときには、市民記者はその費用を自己責任において自己負担しなければなりません。
「市民記者に課せられる責任」とはかくも重たいものなのです。
第14条(市民記者による登録の抹消)
1.市民記者が、市民記者登録を抹消しようとするときは、当社所定の方法にしたがい、当社に通知するものとします。
2.前項の通知があった場合、当社は、当社が当該通知を受理した日から2営業日以内に当該市民記者のユーザーIDを削除し、市民記者登録を抹消するものとします。
3.市民記者登録の抹消時点で存在する当社の市民記者に対する原稿料については、市民記者登録退会日の翌月末日に精算するものとします。精算方法は、第12条の定めに準じるものとします。
4.市民記者は、市民記者登録を抹消した場合であっても、本規約に基づき負っていた投稿記事やコメント等に対する責任その他本規約上の義務を引き続き負うものとします。
第15条(当社からの市民記者登録の一時停止、抹消)
1.当社は、市民記者に次の各号のいずれかに該当する事由が発生した場合には、事前に通知または催告することなく、何ら責任を負うことなく、当該市民記者のユーザーIDの利用を一時的に停止し、または市民記者登録を抹消できるものとします。
(1)市民記者登録後に、市民記者登録の拒絶事由の存在が判明した場合
(2)本規約のいずれかの条項に違反した場合
(3)市民記者が、その責めに帰すべき事由により当社もしくは第三者に損害を与えた場合
(4)市民記者が第10条各号のいずれかに該当する行為を行った場合
(5)市民記者に対し当社からの通知が到達しなかった場合、その他市民記者の所在地が判明しなくなった場合
(6)市民記者が死亡した場合または後見開始、補佐開始、もしくは補助開始の審判を受けた場合
(7)その他当社が市民記者としての登録の継続を適当でないと判断する事由が発生した場合
2.前項に基づく市民記者登録の抹消時点で存在する当社の市民記者に対する債務については、市民記者登録抹消日の翌月末日に精算するものとします。精算方法は、第12条の定めに準じるものとします。
3.第1項の定めにより市民記者登録が抹消された場合であっても、市民記者は、本規約に基づき負っていた投稿記事に対する責任その他本規約に基づく義務を引き続き負うものとします。
どうも言葉は悪いのですが、「切り捨て御免」という印象がぬぐえません、オーマイニュースは市民記者に対して非常に「やさしくない」態度をとっているように思えます。
市民記者を辞めたあとでも「自己責任は自己責任、一度書いたら逃げられぬ、覚悟しろ!」というのは、ログが残るネットならではのことなのかもしれません。
が、どうもメリットよりもリスクのほうが大きいような気がするのですが気のせいか、はたまた私に崇高な奉仕精神が欠けているのでしょうか。
第16条(通知・連絡)
1.当社は、市民記者に対する通知・連絡等を、書面による郵送、当社ウェブサイトへの掲載、その他当社が適当であると判断する方法により行うものとします。
2.当社が当社ウェブサイトへの掲載により市民記者に通知・連絡等を行う場合には、当該通知・連絡等を掲載してから24時間を経過したときに効力を生じるものとし、その他の手段による通知・連絡等を行う場合には、当該通知・連絡等が市民記者に到達したときに効力を生じるものとします。
3.市民記者が連絡先の変更等を怠ったために当社からの通知・連絡等が遅延または不着となった場合、通常到達すべき時に到達したものとみなします。
メールという一文字くらい見当たってもいいと思うのですが、なんでないんでしょうか?
素朴な疑問です。なぜその他扱いなのでしょうか?
第17条(第三者への委託)
当社は、本規約に基づく当社の業務の全部または一部を第三者に委託して行わせることができるものとします。
第18条(個人情報の保護)
1.当社は、市民記者の個人情報の収集、利用、提供および公表等にあたり、法令の遵守徹底を図り、別途当社のホームページ上に掲示する個人情報保護方針およびプライバシーポリシーに従い適切に実施します。
2.当社は収集した個人情報を次の目的で利用します。なお、次の目的およびこれと相当の関連性を有する目的以外の目的で当該個人情報を利用させていただく場合は、その都度、その利用目的を明確にし、ご本人様から事前の同意をいただきます。
① 記事または「この記事にひと言」欄への書込みの署名
② 原稿料の支払い
③ 問合わせ対応および手続き等の案内やサポート
④ 記事または「この記事にひと言」欄への書込みに対する当社からの内容確認、裏づけ取材等の照会
⑤ 記事募集および記事作成依頼の連絡
⑥ 出版、放送、公衆送信および第三者への販売ならびに第三者のWebサイト掲載に伴う記事の署名
⑦ イベント、セミナー、商品、サービスの案内
⑧ メールマガジンの配信
⑨ アンケート、マーケティング調査、分析
⑩ 希望する方への商品、サービスや資料などの配送、提供
⑪ 当社の定める「市民記者規約」および「サイトポリシー」に定める業務
⑫ その他、「オーマイニュース」の運営および提供に必要な業務
第19条(権利の譲渡)
市民記者は、市民記者登録上の地位または市民記者登録に基づく権利義務のいかなる一部についても、譲渡、貸与、または質入等の担保設定その他一切の処分を行ってはならないものとします。
市民記者に対して「自己責任」を言う割に、オーマイニュースは個人情報を「その他」の理由で市民記者が容易に知りえない「第三者」に預けたり渡したりしてもいいんだよ、としている気がします。
まあ、得体の知れない個人ではない、れっきとした会社組織なのだから信頼しろってことなんでしょう。
その分、「得体の知れない市民記者」に対しては、ほんと細かくきびしいですね。
第20条(準拠法)
本規約および市民記者登録に関する準拠法は、日本法とします。
第21条(合意管轄)
本規約または市民記者登録に関する一切の紛争については、東京地方裁判所または東京簡易裁判所をもって第一審の専属的合意管轄裁判所とします。
訴訟リスクにまつわる項目。
関東以外の地方在住者にとっては現実的にきびしい条件がここに。
一々東京まで出てこないといけないことになると、日常の仕事が大幅に阻害されることは明白です。
だからこそ、そのような事態を避けるために、リスクを回避したネタを扱い、またプロの編集・校正に対して、一読して気づく文章上の問題点を訂正してもらえるものと期待するところです。
が、現実の編集・校正の状況を見るに、その記事選択や校正のレベルはトラブル回避に役立っているとはとても思えません。
これでは、やはり迂闊なことは書けないし、ましてや二重三重に「自己責任」が求められている状況では、あたりさわりのないネタしかかけないことになるでしょう。
第22条(「この記事にひと言」欄の利用について)
市民記者の登録をされた方は、本規約に従い、「この記事にひと言」欄をご利用いただくことができます。
第23条(コメント等に関する責任)
当社は、「この記事にひと言」欄を、市民記者のみなさまに自由に意見を交換して頂く「場」と位置づけております。コメント等の内容は、市民記者の意思と責任の下に掲示されるものであり、当社は、その内容の信頼性、真実性、正確性、適法性その他一切の性質について何ら保証するものではありません。当社は、コメント等が本規約に抵触するか否かを積極的に監視する義務を負うものではありません。
「コメント欄は開放するが、管理はしない」という堂々たる宣言。
「自己責任」原理が徹底して貫かれていることがわかるというものです。
なるほど、オーマイニュースが目指すのはコミュニティではないのでしょう。
では、いったいなんなのでしょうか?
オーマイニュースはわざわざ一般人に自己責任でもって記者活動をさせて、僅かばかりの対価と事細かな規則を与えて、いったい何を目指しているのでしょうか?
「社会に生きる個人レベルの情報発信」を啓蒙する、とでも言うのでしょうか?
……それはブログとどう違うものなのですか?
第24条(禁止行為)
市民記者は「この記事にひと言」欄において、次の行為を行ってはならないものとします。
(1)チェーンメール、マルチまがいその他商業目的いかんにかかわらず勧誘を目的とする内容を含むコメント等の投稿。
(2)他人に著しい不快感を与える内容および罵詈雑言、他人を威迫・脅迫する内容を含むコメント等の投稿。
(3)いわゆるスパム行為、すなわち、スパムメッセージ(一人または複数の市民記者が、同一または類似のコメント等を多数投稿する行為。)、スパムワード(一人または複数の市民記者が、当該記事と無関係若しくは関連性の希薄な語句を複数羅列し、または著しく長い文章若しくは大量の語句を投稿する行為。)、スパムURL(一人または複数の市民記者が、同一のURLを投稿する行為。)またはいわゆるアスキーアートの投稿。
(4)成りすまし行為、すなわち、自分以外の人物を名乗ったり、代表権や代理権が無いにもかかわらず会社等の組織を名乗ったり、または他の人物や組織と提携、協力関係にあると偽ったりする行為。混同されることを目的として似通ったニックネームを使用する行為。自作自演や意見の誘導、および混乱させる行為。
(5)他人および本人であってもメールアドレス、住所、電話番号、クレジットカード番号等プライバシー情報を含むコメント等の投稿。
(6)差別的な表現および差別的な意図を含む、および倫理的な観点等から問題のあるコメント等の投稿。
(7)アダルトサイトに誘導する情報、児童や青少年に対しその健全な育成を阻害する内容を含むコメント等の投稿。
(8)自殺、自傷行為、薬物乱用等を誘発・助長する恐れのある言葉その他の表現の投稿。
(9)上記制限事項に該当するWeb サイトにリンクするものおよびニックネーム。
(10)その他当社が不適切と判断する行為
第25条(メッセージ等の削除や移動等の措置)
1.当社は、「この記事にひと言」欄に掲載されたコメント等が本規約に違反するものである場合、当社が必要と判断する範囲でコメント等の全部または一部の削除を行い、市民記者による「この記事にひと言」欄の利用を禁止もしくは制限し、または市民記者の登録を抹消する権利を有するものとします。
2.当社は、「この記事にひと言」欄の掲示方法、カテゴリ、掲示期間等、「この記事にひと言」欄の設営に関する一切の事項を決定する権利を保有します。もっとも、当社は、メッセージ等の削除の行使または不行使に関し、何らの義務や責任も負担するものではありません。
「もっとも、当社は、メッセージ等の削除の行使または不行使に関し、何らの義務や責任も負担するものではありません。」
なのに細かな禁則事項。
もちろん、多岐にわたる記事のコメント欄のすべてを管理することは難しいとは思いますが、「義務も責任もない」と言い切る項目に果たして意味があるといえるのかどうか。
それもこれも、もともとコメント欄に何らの意義を見出していなかった、というのが根本なのでしょう。
だったら、なぜコメント欄を作ったのでしょうか?
なんというか、コメント欄というものを「良心的な反応」だけを回収する自画自賛システムだと考えていたのではないかと勘ぐってもしまいます。
第26条(コメント等に関する著作権の帰属)
1.コメント等に関する著作権は、市民記者に帰属するものとします。
2.市民記者は、当社ウェブサイトにおいて当社または当社に対して使用許諾している第三者が掲載等する情報等については、当該情報等に関する著作権その他の一切の権利が当社または当該第三者に帰属することを了承し、当該情報等の取り扱いについては慎重な配慮を行うものとします。
3.市民記者が「この記事にひと言」欄においてコメント等を投稿した場合、市民記者は当社に対して当該コメント等について国・地域にかかわらず無償で非独占的に使用する権利(複製権、頒布権、翻訳権、送信可能化権を含む公衆送信権を含みますが、これらに限られません)を許諾したものとみなします。また、市民記者は当社に対し、コメント等に関して著作者人格権を行使しないものとします。
第27条(免責事項)
1.市民記者は、「この記事にひと言」欄を専ら自らの責任において利用するものとします。当社は、市民記者による「この記事にひと言」欄の利用に関連して生じた責任および損害について一切責任を負わないものとし、市民記者自らの責任において処理することとします。コメント等が法令違反や著作権等の権利侵害にあたる場合には、損害賠償などの民事責任の他、刑事責任を問われることがありますのでご注意ください。
2.当社は、コメント等の掲示時期、削除、または保存の有無について何ら責任を負わないものとします。また、当社は、コメント等より発生するいかなる損害についてもその責任を負いません。
(2006年7月21日制定実施)
(2006年8月28日改定実施)
(2006年11月10日改定)
(2006年11月17日上記改定実施)
なるほど、「記事にあらねば文字にあらず」とでもいうような態度がここで明白になります。
記事の著作権はオーマイニュースに所属するが、オーマイニュースが管理することは「ほぼ」なく、勝手に書き込まれたコメントは、すべて市民記者の「自己責任」で取り計らえというものです。
オーマイニュースのコメント欄とは、記事を書くよりもリスクの高い行為として設定されているのでした。
これはある意味で、「コメントするな」という強烈なメッセージになっているような気もします。
もちろん、否定的な言葉が並ぶことに対する危惧はわかりますが、それにしてもこうまで露骨にコメント欄の存在自体を否定する態度を取りながら、それでもなおコメント欄を閉鎖しないという姿勢が理解に苦しみます。
「言葉の暴力」というのは、それを受け取る個人の主観に大きく左右されるものだということを考えると、これではまともな批判や指摘すらうかつにできないという萎縮効果を生んでしまい、それこそ「中学生の日記」的なコメントしか存在しない異様な状況が発生しそうな気がします。
以上の点を元に、木走日記 - 「オーマイニュース」鳥越氏の無責任な「責任ある参加」論で言われる、
「職業記者でもない限り一般社会人がネットで本名で組織批判などできるはずがないのです。」という批判を考えると、
J-CAST ニュース : 鳥越俊太郎に聞く(2) ネットでも実名文化がいい
鳥越: もう一つは色んな職業の人に市民記者になってもらいたいわけなんですね。会社の中で言いたいけれど言えないことを書いてもらったり、その道のプロだけれども物書きのプロでない人が参加してくれればいいのかなと。オーマイニュースを見ていても、僕らではわからない専門的な記事もありますから、そういう人が来てくれればしめたものかなぁと。中央官庁の役人が、実名で内部の腐敗を書いてもらえると活気付くと思いますね。
という、鳥越氏の言葉がいかに無責任かつ妄想的なシロモノであるかがわかるというものです。
また、その前段の言葉にしても、ネット上におけるプライバシーの流出というリスクに対する見積もりが甘いと感じます。
日常生活の中にある、それこそ病気とか、教育とか食事とか生きている上で殆どの人が重視していることがあります。そういうところで市民記者になってもらう。
まあ、オーマイニュース側からすれば、ほとんどすべてが市民記者の「自己責任」なので、誰が何を書いたせいで、どこでどんな被害に会おうと自分たちには関係ないというのだから、どんどん死線に踏み込んでもらいたいというところなのでしょう。
編集の良識だのスクリーニングだの、ましてや身分保障など、とても期待できたものではありません。
気楽な「ネットジャーナリズム」もあったものです。
また、「責任ある参加」「責任ある参加」というが、「運営側の責任」というのはいったいどこにあるのでしょうか?
「枠を用意したのだからそれに対して忠誠を尽くすべきだ」というその姿勢。
これではまるで国民をないがしろにしながら「愛国心」を強制する政府自民党・経団連のようではありませんか。