毎日紙曰く「介護は、ビジネスとして職業として、夢も希望もないどころか、成り立っていない」

経済成長の御為として勧められてきた職住分離によって切り捨てられてきた生活というものが、高齢化社会という形で復讐を始めたというわけか。
聞くところによれば、『葉隠』『武士道』に引き続き、あの奴隷道徳の金字塔「二宮尊徳二宮金次郎)」までもが再び世に甦らされ、流布されようとしているとかいないとか。
だが、そのエピソードを伺い見るに、その復古主義はまさしく墓穴を掘るものになるとしか思えない。

村人の仕事ぶりを見て回り、木の根しか撤去できない、周りの村人から馬鹿にされていた老人に15両もの褒美を与え、逆に他の村人より3倍近く働いている(人が見ている時だけ働いているように見せかけ、普段はサボっている)若者を厳しく叱った。


二宮尊徳 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E5%AE%AE%E5%B0%8A%E5%BE%B3


要するに若者叩きかよ。
老人様の年金を支えるために、苦労して我慢して奴隷労働にいそしめ、と。
は?「働いているように見せかけ」?「普段はサボっている」?
その評価は一体誰がいかなる基準で下す主観的判断なのですか、と。
感情労働」における「精神的売春」を自然にこなせないものはすべてこうして叩かれ、すりつぶされ、「自己責任」の名において老人による老人のための老人の社会から排除されるのです、と。



「カネも出さずに、こころの価値を、詠い、その実、搾取する!」ってか。


発信箱:コムスン問題の黒幕=中村秀明
 コムスン折口雅博会長を糾弾し、社会的制裁を加えれば、すべて丸く収まるのか。不正請求で暴利をあげ、サービスの中身も劣悪なら。福祉でぬれ手であわを狙い、老人を食い物にしていたなら、話は単純だ。

 しかし、コムスン訪問介護分野は利益面で振るわず、ワタミ渡辺美樹社長に「老人ホームには関心があるが、訪問介護はいらない」と言われた。一方で、「24時間営業」など他社にないサービスが利用者に高く評価され、離島まで拠点を持つのはコムスンだけ。業界2位のニチイ学館は「24時間体制を全面的に引き継ぐのは無理だ」と語っている。

 つまり、ディスコのノリを重視する野心家が、独自のサービスで顧客の支持を受けながら、社員に厳しいノルマを課し、不正を積み重ね、それでも採算に乗らないのが訪問介護事業と言える。さらに現場のヘルパーの多くは年収300万円未満で、離職率も高い。介護は、ビジネスとして職業として、夢も希望もないどころか、成り立っていないのが現実だ。

 そもそも介護事業には、まっとうにやって利益を上げられる仕組みが備わってないふしがある。厚生労働省が06年度に、介護保険会計の健全性を維持するためとして業者への介護報酬を引き下げたせいと指摘する関係者は少なくない。

 介護を「無償の奉仕」として家族や地域だけに押し付けるのでなく、「事業」として民間に委ねたはいいが、例によってお役所仕事に終始する厚労省こそ問題の黒幕ではないか。このままではやがて何十万、何百万人の介護難民が生み出される日がくる。(経済部)

毎日新聞 2007年6月15日 東京朝刊



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