「心」をテーマにするマンガ

ここ数年、とある友人の影響でマンガを特によく読むようになって以来 *1 、それまでほとんど本棚で足りていたマンガの数が、段ボール箱10箱近くなっている *2
その最近読んだ中でも、特に興味深かったのがこの、惣領冬実『ES』(モーニング、6巻、刊行中)と、三宅乱丈『ペット』(スピリッツ、全5巻)の二作である。
もちろん、面白いマンガというのもほかにたくさんある。だが、興味深い、実に興味深いといえるマンガは、この二作であったといえる。
この二作に共通する点は、共に、「人間の記憶」を操る能力、「心」≒「記憶」を操る超能力をテーマとしている点である。そして、『ES』はまだ話が続いているが、実質的には『ペット』と同じく5巻で終わっているといってよい。
この同じテーマを扱った作品が、同じ紙幅を費やした上で、こうまで対照的な答えが導き出されたことには驚かされる。それが、この二作の興味深い点である。
このような作品がほぼ同時に生まれた背景には、昨今の心理主義的な社会、「心理学化する社会」というものがかかわっていることは間違いない。それが単なる「反映論」だという指摘に対しては、そもそもマンガとは商業ベースにのっとった商品であるということが一ついえる。つまり、出版・編集というシステムがある以上、そこには、商品としての「企画」が、作品のよって立つ「前提」となっているはずである。ならば、商品としてのペイを考慮するに当たっては、流行に棹差すような判断がなされないはずが無い。
ではまず、両作品がどのようなものであるかについて概説しよう。

*1:まあ、その前からすでにオタクだったわけですが何か。

*2:もちろんリンゴ箱、やキャベツ箱に入れれば半分くらいになるのかもしれないが。