無意識のユートピア――「大学改革」としての「首都大学東京」

「首都大学東京」、なんというお間抜けな響きか――
実利、営利を主眼とする企業主導の社会から、実学主義的な「実技機能養成機関」としての実用一辺倒主義への、「学究」などというものには一部の余裕も許される余地のない、お上にかしづく「賃金労働者養成機関」への変容が、大学にもとめられている昨今、「石原東京鎮守府将軍都知事閣下」*1とも称される、かの知事様は実に時代遅れな、教養主義的な大学を作ろうとされています。いや、もうこの「改革」は成就してしまった後でしょうか。
しかし、かの都知事様の肩書きにある元文学者、ロマンチストという、その出自を考えるだけでもその怪しさが測れるというものです。
日の丸を根性棒にはためかせているかの知事様は、下半身の衝動で「常に無意識に」国のことを考えておられます。
いや、それは、国に「萌え」ているのだといったほうが正解でしょうか。
愛国的、憂国的なキーワードでもって、自らを「正義」と任じるそのお姿は、この「萌え」という心理構造が、単にオタクに限らず、保守派の心性にもしっかりと通じていることを示しています。
それはまた、すでに浅羽何某という保守派の論客も指摘しているところであり、さらにまた、「保守」層のボキャブラリー、思考のキーワード的＝非文脈的な性質という点については、小熊英二も『<癒し>のナショナリズム』で触れているところです。そして、あの「作る会」の方々でさえ、「国」や「民族」という概念の想像性を、当然のこととして踏まえたうえで、「あえて」その想像的イデオロギー性を諧謔的に信仰する、もとい主張するといったように、「まともに信じているわけではない」という現状です。
しかし、まともに信じていないからこそ、おいしいところだけを取り出して、人当たり、口当たり、耳障りのいいポイントだけを、キーワードとして時事的に、即妙に、電波飛び交うその電子レンジから取り出すことができるということでしょうか。
「おにぎり、温めますか〜〜〜？」
出して見せれば、見せただけの反応が得られてしまうという、悲しいコンビニ時代の日本人の思考力の程度が見え隠れしている、そんな気がするようなしないような・・・

それにしても、いまさら教養主義的大学の復活・・・・・・
まあ、都知事様様に限らず、保守派の老害権力者というのは、大抵10年ももたないような妄想を「100年の大計」として爺に老ける自慰に耽るのが常なわけですが・・・そう、ナベツネや小泉（＝小鼠）のように。
そして、確かに、その決定プロセスの強引さはとても民主主義的なものとは言えず、まともな政治家がやることとは思えません。それで、よく他国の「民度」*2を口にできたものです。この辺、さすがは電子レンジ脳といったところなのでしょうか。
とてもまっとうなものとは思えません。
思えませんが・・・その・・・・・・おや？でも、どうでしょう。

「形而上的、思想的学問に師事する（を支持する）大学を21世紀に復活させる！！」

これって、
多くの大学のセンセイ方が望まれている「大学」の姿そのものなんじゃないでしょうか？

「学生が勉強しない！」
「学生の本分は学業だ／研究だ！！」
「もっとテキストを読みなさい！本を読みなさい！！資料を調べなさい！！！」

コレが「教養主義」でなくて、一体、何なのでしょう？
「学問の学問による学問のための学問の復権！それが首都大学東京の趣旨だ！！」
こういわれたら一体、誰が反対できるのでしょうか？
誰しもが公然、暗然と口にして望み、誰しもがそれを理想に掲げ、夢想し、現実との落差に扼腕する現状で、一体センセイ方の内の、誰が、どうして、その「改革」に異議を唱えることができるのでしょうか？

「無意識過剰」

かの都知事様を称して、このようなことが言われます。
確かに、日の丸に根性棒突き立てるその姿は、どこぞのテキサスの馬鹿息子といい勝負です。
しかし、やっかいなのが、彼が単なるロマンチストであったのではなく、「ロマンチスト」ということを「技術的に生業としていた人物」＝「文学者」であったということです。
そして、それが彼のパフォーマンスの巧みさ、人々の無意識の要求をキャッチし、それをおいしいところだけキーワード的に旗印に掲げることで、歓心を買い、支持を得てしまう、という点につながっているのです。
だとすれば、今回のこの「教養主義的大学改革」。
大学教員の「無意識の欲求」をすくい上げ、見事にそれを体現した「ユートピア」であるといわざるを得ません。
無意識のユートピア、首都大学東京。
そこからは、はたして、実体のある「意識」が生まれることがあるのでしょうか？




「「「美しい日本の大学――「首都大学東京」です、「首都大学東京」をよろしくお願いします・・・明日の日本の基礎を作る・・・・・・」」」

*1:http://d.hatena.ne.jp/keyword/%c0%d0%b8%b6%c5%ec%b5%fe%c4%c3%bc%e9%c9%dc%be%ad%b7%b3%c5%d4%c3%ce%bb%f6%b3%d5%b2%bc◆ヘヴンズブラザー：権力保持の大事な選挙の時には、おばさん層に対して強力な集票効果をみせるぞ！

*2:２ちゃんねる発と思われる、投票結果や集票状況から連想される、当該地域の選挙民の政治的成熟度を示す…と思われるなぞの日本語。例、「あの鈴木ムネヲが当選しそうになるなんて、北海道は――が低いね。」「レイプ擁護と変態を当選させたら、福岡の――が疑われる。」