鞍馬の火祭り

思えば、いったい何度、ここへ行く機会があっただろうか。
それでも、それでもなお行かなかったというのは、自分の中で何かが足りなかった、ということなのだろう。

中で、というよりも、自分にまつわるもの、「祭り」という行為へと発火する契機としての、自分以外の何か――、か。

思い出すのは、地下鉄の座席。緑色の座席、エンジ色の座席。そして、陰射す空気、夜へと沈む空気。北から南へと、南へと向かい続ける体の、軽さ、足の運ぶ軽さ。

一年に一度のその日、時間が近づくにつれて思いつきの勢いは失せ、頭は――重くなった。

いつか、いつか、と念じながら、体はいともスムーズに家路へと、帰路へと運ばれる。そう、なめらかに、トドコオリなく、気がつけば真逆の方向に向いて座っていた。

なんと七年もの間、そうしていたのだ。
七年が、はたして七年全てのことかはわらないが、少なくともここ三、四年――この日はその重い一日だった。

そしてついに、七年の間に、その重さを解消することは、その重さが解消されることはでき、なかった、――しなかった、というよりもできなかった。それだけ、重かったのだ。