法王の評価と指輪の行方

さて、ややもすれば、世界中を飛び回って協議や紛争の調停に当たってきた、まさに「聖者の鑑」であったとして、語られて終わってしまう*1ヨハネパウロ2世であるが、
一方で、その晩年に顕著となった保守的な姿勢について批判の声も上がっている。

「法王は矛盾だらけ」 改革派からは批判の声
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改革派が問題視するのは、法王が人権尊重の姿勢を示す一方で、既婚男性や女性の司祭、避妊、中絶には反対の態度を取り続けていた点だ。
カトリック教会の改革を目指す国際組織「ウィー・アー・チャーチ」は「ヨハネ・パウロ2世による法王は矛盾に満ちたものだった」「世俗界に示した人権推進の意識は教会には適用されなかった」との声明を発表した。
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「外向きにはオープンで進歩的。しかし内向きにはとても厳格で、非常に保守的。性や遺伝、同性愛などに関する教えにおいては、あまりに厳しすぎた」
「ウィー・アー・チャーチ」は、キリスト教聖職者による男児への性的虐待の問題が噴出したときの法王の対応についても、あまりに遅く、優柔不断だったとしている。
ヨハネ・パウロ2世がローマ法王庁を中央集権の権威主義的な官僚組織にしたとの批判もあがっている。

そして、その保守的傾向が、次の法王にも継承されるのではないかという予測もすでに出ている。

新法王選出「コンクラーベ」 有力候補十数人が浮上
 ヨハネ・パウロ二世の死去を受け、バチカンでは後継法王選びが本格化する。早くも、法王庁の教理聖省長官でドイツ出身のヨゼフ・ラッツィンガー筆頭枢機卿(77)や、法王庁国務長官のアンジェロ・ソダーノ枢機卿(77)、ミラノ大司教のディオニジ・テッタマンツィ枢機卿(70)ら十数人の名前が取りざたされている。
しかし、「コンクラーべ」と呼ばれる新法王選挙への参加資格を有する枢機卿の大半は、ヨハネ・パウロ二世自身が任命しており、同二世同様、保守色の強い後継指導者の誕生は確実とみられる。

ヨハネ・パウロ2世以上に、世俗性よりも宗教倫理を優先する志向を持った法王が誕生するとすれば、それはひとつの恐ろしい予測を生む。
それは、ローマ法王が、万人が認める宗教右翼であるアメリカ大統領J・ブッシュの後見人となってしまうのではないかという悪夢である。
まがりなりもアメリカの世界戦略に歯止めを欠けようとしてきたローマ法王が、今後は、一方的かつ独善的なブッシュ政権を支えるようになってしまうとすれば、
それは、聖と俗の両面を牛耳る、まさに悪魔のような存在の誕生となりかねない。
これは杞憂に過ぎない、と言い切ってしまいたいのだが。

*1:終わってしまうといっては失礼だが