loveless umetenから、loveless zeroさんへの返信

umetenです。
度々、取り上げてくださり感謝しております。
おっしゃるように、「マイクロテロ」という概念*1の流布には、人を「マイクロテロ待望の時代」という危うい「終末待望社会」に陥らせる危険性があるという点は、無視できない点だと思います。それゆえ、安易にこの言葉が広がる前に、何とか「定義化」してみた次第です。


ですが、
逆に言えば、マイクロテロはその存在や発生に「期待」をすること、想像をいたすことで、自らの行動を律し、自らはそれを行わないことにつながる部分もあると思います。*2
そして、
「誰かが悲劇に会うことでその反省を契機として何らかの改善がなされ、それがひいては自分の利益になるだろう」という「風が吹けば桶屋が儲かる」式の態度ではなく、
「悲劇を想定した上で、自らの行動を変革する」という「他山の石」という態度、「他を思いやる心こそが社会全体の利益となる」という「急がば回れ」式の想像力への訴えかけが、今回の「マイクロテロ」「サイレントテロ」のキーワード化に際しての根幹を成す精神であったことを申し添えます。


「想像力の必要性」への気付きへの期待が、二つのキーワードを貫いているとお考えください。


少なくとも「テロ待望論」や「他人事」としてではなく、ひとりひとりの「自分の未来」を形作るための「想像力」。それを「課題共有」するための、方便としてのキャッチーなキーワードの効果と落とし穴は、表裏一体の「リスク」であると考えます。


しかし、サイレントテロという概念*3においては、それが決してクリティカルな抑止力とはならず、さらに事態を加速してしまう致命的な可能性が残ります。
なぜなら、それが「現実肯定」に基づいた行動であるからです。
未来ではなく現在をまなざす「リアルな」視線が、焦点を結んだ「結果」だからです。
もはやこれの場合、概念化*4が抑止力になりえる部分が、かなり低いものとなるといわざるを得ません。
サイレントテロにおいては、日々の行動がすべて「結果」に直結するということになり、その改善には、具体的な「お金」をもってしか臨めない面が多々あります。
希望を生み出すにしても、その最初のコストを誰がどう払うのかについては、まだ考えが至りません。


それはそもそもこの社会、資本主義社会が、「永遠の経済成長」という異常な命題に基礎付けられていることに起因するのだと思います。
だが、「ニューエコノミー」なるものは存在しない。
過去、日本のバブルにおいても、アメリカのITバブルにおいても、そうだったではありませんか。


「資本主義」のみならず、その根幹となる「社会」を破壊せしめているのがサイレントテロです。そして、その母体となったのが自由主義経済であることは、改めて言うまでもないでしょう。
マネー経済の行き着く先のひとつが、社会すべての投資家化ではなく、その基盤たる社会の崩壊であったということが、今徐々に明らかとなりつつあるということなのでしょう。
マネーとはすなわち価値であり、それは本来人のこころに基づいたものであったはずのものであるにもかかわらず、それがこうまで人から離れてしまったということです。


この一年でつくづく感じるようなったのは、この社会では一歩家を出たら、物を買うことしか、お金を使うことしか楽しみがないということです。
つまり、人間の価値が、お金を払うことでのみ測られている、お金でしか人間の価値を証明することができないといったような状況になっている。
時に、どうしようもない「貧しさ」を感じてしまいます。


前期近代の上昇機運に狂乱する中国ならいざ知らず、もはや後期近代(ポストモダンもモダンの内だ、という意識)に至った日本では、そして前期近代型の思考の残滓が起こした破綻(バブル)の後では、もはや一方通行的な大量生産・大量消費・大量廃棄の不毛なサイクルが好転するはずもありません。
そして、
そこでこそ、サステイナビリティ(持続可能社会)とは、何も生産・消費のサイクルを持続させていくという単なる物質的命題なのではなく、今生きている人間社会を持続させていくということに対するより柔軟で、より繊細で、より緊迫した精神的な命題なのではないかと考えます。
70年代後半から唱えられ続け、もはや、ある種カビの生えたかのごとき「物の時代から心の時代へ」というスローガンですが、「腐っても鯛」という精神でそのスローガンをも巻き込んで、「想像力」、そしてもちろん「思考力」を基にした「課題共有」を測っていかなければ、現実の問題として、未来は明るいものではないでしょう。


現在と未来とを希望でつないで行く、そういった意味での人間社会を持続させていく想像力。


その想像力をつないでいく、そのためのキーワードは、
ルサンチマンを笑うな!」でしょうか。


愛飢え男umeten



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4 フランスのテロリズム研究書
5 本格的な入門書

*1:といった思考なり想像力

*2:少々性善説に過ぎますか。

*3:といった思考なり想像力

*4:思考なり想像力