憲法記念日の改憲論議

このタイトル自体、語義矛盾のような気がするのだが、それが現実なのだから仕方がない。
何もかも「美しい国」のため。
「お上のやることに間違いはございませんから。」*1

NIKKEI NET:政治 ニュース:首相、改憲の議論「強く期待」・施行60年で異例の談話発表
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20070503AT3S0201D02052007.html


 安倍晋三首相は3日付で憲法施行60年の談話を発表した。憲法を頂点とした行政システムなどの基本的枠組みは大きな変化についていけなくなっており、見直しが迫られている」と指摘。「憲法のあり方について国民的な議論がさらに広く展開され、方向性がしっかり出てくることを強く期待する」と訴えた。

 首相はかねて改憲に意欲的だが、行政府の長が憲法記念日にこうした談話を出すのは異例。7月の参院選に向け、憲法論議を盛り上げる狙いがあるとみられる。

 施行50年だった1997年に当時の橋本龍太郎首相も談話を出したが、「民主的社会の建設にまい進する」など一般論だった。

 今回の談話は戦後レジームを原点にさかのぼって大胆に見直し、憲法について議論を深めることは新しい時代を切り拓(ひら)いていく精神へとつながる」と首相の持論をストレートに打ち出した。


何も考えずに生まれと育ちだけで首相にまでなれたというのに、この男はいったい何が不満だと言うのか。
たとえ戦前の天皇の地位に生まれていても文句を言うんじゃないのか。
だいたいが、こんな
憲法を頂点とした行政システムなどの基本的枠組みは大きな変化についていけなくなっており、見直しが迫られている」
などという、主権者たる国民をあからさまにないがしろにした不遜なセリフを口にして恥じない時点で、その政治的思考能力が決定的に欠けていることを公言しているようなものなのだが。
ま、なにがどうなろうとどうせ関係ないけどね。
美しい国」のお子様たちは、がんばって未来の負債に苦しんでね!

政治 北海道新聞 超党派保守系議員有志 「新憲法大綱案」を提言
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/23923.html

 自民、民主、国民新など超党派保守系議員有志でつくる新憲法制定促進委員会準備会(座長・古屋圭司衆院議員)は二日、天皇国家元首と明記し、「防衛軍」創設などを盛り込んだ新憲法大綱案をまとめた。三日に東京都内で開く憲法フォーラムで正式発表する。

 大綱案は提言の形を取っており、天皇制については象徴天皇制を維持しつつ、条文で天皇国家元首と位置づけ、皇位継承権は男系男子に限定する考え方を示した。

 戦力の不保持と交戦権否認を定めた現行憲法九条二項は全面削除。首相が最高指揮権を持つ「防衛軍」を創設し、「国際社会の平和と安定に寄与できる」ことを明記するとした。集団的自衛権行使の権利明確化国民の「国防の責務」軍事裁判所の設置憲法改正発議要件緩和も打ち出している。

 準備会は今後、現在二十五人の参加議員を拡大して「新憲法制定促進委員会」を発足させ、大綱案をたたき台に条文化作業に入り、各党の憲法論議に反映させる考えだ。


こちらもまたあからさまなタカ派極右の意気軒高ぶり。
これどこの革命政府だよ。
北もミャンマーもびっくりだよ。
そもそも普通こういう議論は、体制転覆側がするもんだろうがよ。
しかも、ご丁寧に、
憲法改正発議要件緩和
まで盛り込んで、
これでいつでもどこでもお好きな時にお好きなようにユビキタス改憲ができちゃいます!ってか?
もう『一九八四年』のニュースピーク*2どころの騒ぎじゃないな。
それにしても、革命やクーデターなしに、こんな改憲議論がなされる国なんてほかにあるのか?
宗教がらみの「世俗主義」対「原理主義」の軋轢ならまだしも。
あ、そうか。
世俗的天皇が不満なわけだ。
神話的天皇が恐れ多くも支配してくださるような神権政治を理想として戴きたいというわけだ。
そして、ちなみに天皇の意見や意思は、周囲の政治家がそえぞれ独自の推測でもって考え出して、下々にしろしめされるというわけだ。
ま、なにがどうなろうとどうせ関係ないけどね。
美しい国」のお子様たちは、がんばって未来の負債に苦しんでね!

*1:これたしか小学校の国語の教科書に載ってた時代劇小説のお白州(裁判)でのセリフなんだけど、元ネタがさっぱりわからない。誰か知っている人いませんか?

*2:体制維持に適合するように時々刻々と言葉の定義、歴史の解釈が改変されていく文法体系